運賃改定の実施について
当社は、2023年10月1日(日)に運賃改定を実施いたします。
今後も当社では、これまで培ってきた安全・安心の運輸事業の歴史とその責任を、“人と人” 、 “まちとまち”、そして“人とまち”をつなぐ多様なモビリティ事業への深化で具現化し、未来につなげていくという公共交通事業者としての使命を果たしていく所存です。
新運賃はこちらの運賃検索サイトからご確認いただけます。
改定の理由について
当社は、沿線の定住人口・交流人口の増加による地域活性化を目的として、宅地開発や地域と協働した観光振興、2014年の泉北高速鉄道の南海グループ化による利便性向上等の様々な取組みを実施するとともに、インバウンド旅客の増加に応じた受入基盤の整備にも尽力してまいりました。しかし、沿線の生産年齢人口は、1995年をピークに今日まで減少を続けており、今後もこの傾向は継続すると予測されております。
同様に、当社の輸送人員についても減少傾向が続いていることに加え、2020年度以降はコロナ禍による「新たな行動様式」の定着が進み、鉄道の利用機会の減少やインバウンド旅客の回復遅れ等により、鉄道の利用者数は今後もコロナ前のレベルへの回復は見込めないと想定しております。
今後の鉄道需要増を見込みがたい中、公共交通事業としての“安全・安心・信頼”を大前提としたサステナブルな鉄道輸送を実現していくためには、バリアフリーや環境対策、利便性、防犯等社会変化に応じた質を高める取組みと効率性を追求することにより、事業の成長を持続していく必要があります。
そのためには、現段階で将来に先送りすることのない計画的な設備投資が必須となっており、今後もコロナ禍以前の設備投資水準をもって、事業上のニーズ及び社会から要請される価値に対応していく必要があると認識しております。
これまであらゆる経営合理化策やコスト削減に努めてまいりましたが、28年間維持してきた現状の運賃水準では、上記設備投資による安全・安定的な輸送基盤の強化や、社会的要請に応えるサービスの高度化といった価値の持続的提供には限界があると判断し、当社の最大限の経営努力の継続を前提としてお客さまに費用の一部をご負担いただきたく、運賃の改定を実施させていただくことといたしました。
主な改定内容について
1.実施時期 2023年10月1日(日)
2.初乗り運賃、改定率および定期割引率
初乗り運賃 | 改定率(増収率) | 割引率 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
普通運賃 | 通勤定期 | 通学定期 | 合計 | 通勤定期 | 通学定期 | ||
旧運賃 | 160円 | ー | ー | ー | ー | 38.8% | 79.1% |
新運賃 | 180円 | 9.0% (7.8%) | 12.3% (12.0%) | 4.5% (4.1%) | 10.0% (9.3%) | 37.0% | 80.2% |
初乗り運賃(1km~3km)は20円、4km~15kmまでは30円、16km以降は40円の改定
3.特定運賃の新規設定
難波駅~中百舌鳥駅間に特定運賃(普通運賃のみ)を新たに設定いたします。
旧運賃 | (改定運賃) | 特定運賃 |
---|---|---|
340円 | (370円) | 350円 |
難波駅~中百舌鳥駅の区間内にある同額区間についても、同様に特定運賃の適用区間となります。
(以下の黄色の8区間が対象となります。)

4.新運賃(定期旅客運賃)
(1)通勤定期旅客運賃表(大人1・3・6か月)
(2)通学定期旅客運賃表(大人1・3・6か月)
5.新旧運賃比較表
(1)普通旅客運賃(大人)
(単位:キロ、円)
キロ程 | 旧運賃 | 新運賃 | キロ程 | 旧運賃 | 新運賃 |
---|---|---|---|---|---|
1~3 | 160 | 180 | 55~59 | 840 | 880 |
4~7 | 210 | 240 | 60~64 | 890 | 930 |
8~11 | 260 | 290 | 65~69 | 930 | 970 |
12~15 | 340 | 370 | 70~74 | 970 | 1,010 |
16~19 | 380 | 420 | 75~80 | 1,020 | 1,060 |
20~23 | 450 | 490 | 81~86 | 1,050 | 1,090 |
24~27 | 500 | 540 | 87~92 | 1,100 | 1,140 |
28~31 | 570 | 610 | 93~98 | 1,150 | 1,190 |
32~35 | 610 | 650 | 99~104 | 1,190 | 1,230 |
36~39 | 650 | 690 | 105~110 | 1,240 | 1,280 |
40~44 | 700 | 740 | 111~116 | 1,280 | 1,320 |
45~49 | 750 | 790 | 117~122 | 1,320 | 1,360 |
50~54 | 810 | 850 | 123~128 | 1,360 | 1,400 |
(2)通勤定期旅客運賃(大人1か月)
(単位:キロ、円)
キロ程 | 旧運賃 | 新運賃 | キロ程 | 旧運賃 | 新運賃 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 4,380 | 5,100 | 39 | 23,220 | 25,290 |
2 | 5,120 | 5,980 | 40 | 23,400 | 25,450 |
3 | 5,880 | 6,860 | 41 | 23,550 | 25,610 |
4 | 6,570 | 7,740 | 42 | 23,680 | 25,770 |
5 | 7,260 | 8,510 | 43 | 23,800 | 25,930 |
6 | 7,950 | 9,280 | 44 | 23,940 | 26,090 |
7 | 8,600 | 10,050 | 45 | 24,070 | 26,200 |
8 | 9,240 | 10,710 | 46 | 24,190 | 26,310 |
9 | 9,880 | 11,370 | 47 | 24,310 | 26,420 |
10 | 10,520 | 12,030 | 48 | 24,420 | 26,530 |
11 | 11,150 | 12,690 | 49 | 24,540 | 26,640 |
12 | 11,790 | 13,320 | 50 | 24,640 | 26,750 |
13 | 12,400 | 13,950 | 51 | 24,740 | 26,860 |
14 | 12,980 | 14,580 | 52 | 24,850 | 26,970 |
15 | 13,570 | 15,210 | 53 | 24,950 | 27,080 |
16 | 14,100 | 15,840 | 54 | 25,070 | 27,190 |
17 | 14,640 | 16,470 | 55 | 25,180 | 27,300 |
18 | 15,170 | 17,100 | 56 | 25,280 | 27,410 |
19 | 15,710 | 17,730 | 57 | 25,380 | 27,520 |
20 | 16,240 | 18,250 | 58 | 25,490 | 27,630 |
21 | 16,760 | 18,770 | 59 | 25,610 | 27,740 |
22 | 17,240 | 19,290 | 60 | 25,710 | 27,850 |
23 | 17,720 | 19,810 | 61 | 25,810 | 27,960 |
24 | 18,210 | 20,270 | 62 | 25,920 | 28,070 |
25 | 18,690 | 20,730 | 63 | 26,020 | 28,180 |
26 | 19,120 | 21,190 | 64 | 26,140 | 28,290 |
27 | 19,550 | 21,650 | 65 | 26,250 | 28,400 |
28 | 19,960 | 22,030 | 66 | 26,350 | 28,510 |
29 | 20,340 | 22,410 | 67 | 26,450 | 28,620 |
30 | 20,730 | 22,790 | 68 | 26,550 | 28,730 |
31 | 21,090 | 23,170 | 69 | 26,660 | 28,840 |
32 | 21,410 | 23,490 | 70 | 26,780 | 28,950 |
33 | 21,740 | 23,810 | 71~75 | 26,880 | 29,060 |
34 | 22,050 | 24,130 | 76~80 | 26,990 | 29,160 |
35 | 22,330 | 24,380 | 81~85 | 27,090 | 29,260 |
36 | 22,590 | 24,630 | 86~90 | 27,190 | 29,360 |
37 | 22,790 | 24,880 | 91~95 | 27,310 | 29,460 |
38 | 23,020 | 25,130 | 96~100 | 27,420 | 29,560 |
(3)通学定期旅客運賃(大人1か月)
(単位:キロ、円)
キロ程 | 旧運賃 | 新運賃 | キロ程 | 旧運賃 | 新運賃 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1,460 | 1,550 | 32 | 6,130 | 6,330 |
2 | 1,880 | 2,000 | 33 | 6,150 | 6,350 |
3 | 2,310 | 2,450 | 34 | 6,170 | 6,370 |
4 | 2,690 | 2,870 | 35 | 6,190 | 6,390 |
5 | 3,080 | 3,290 | 36 | 6,210 | 6,410 |
6 | 3,400 | 3,640 | 37 | 6,230 | 6,430 |
7 | 3,730 | 3,990 | 38 | 6,250 | 6,450 |
8 | 3,990 | 4,250 | 39 | 6,270 | 6,470 |
9 | 4,270 | 4,510 | 40 | 6,290 | 6,490 |
10 | 4,520 | 4,770 | 41 | 6,330 | 6,510 |
11 | 4,750 | 5,030 | 42 | 6,350 | 6,530 |
12 | 4,960 | 5,190 | 43 | 6,370 | 6,550 |
13 | 5,110 | 5,350 | 44 | 6,390 | 6,570 |
14 | 5,280 | 5,510 | 45 | 6,410 | 6,570 |
15 | 5,390 | 5,640 | 46~47 | 6,440 | 6,590 |
16 | 5,490 | 5,770 | 48~49 | 6,460 | 6,610 |
17 | 5,590 | 5,900 | 50~51 | 6,480 | 6,630 |
18 | 5,640 | 5,950 | 52~53 | 6,500 | 6,650 |
19 | 5,700 | 6,000 | 54~55 | 6,520 | 6,670 |
20 | 5,750 | 6,030 | 56~57 | 6,540 | 6,690 |
21 | 5,820 | 6,060 | 58~59 | 6,560 | 6,710 |
22 | 5,850 | 6,090 | 60~61 | 6,580 | 6,730 |
23 | 5,880 | 6,120 | 62~63 | 6,600 | 6,750 |
24 | 5,910 | 6,150 | 64~65 | 6,620 | 6,770 |
25 | 5,940 | 6,180 | 66~70 | 6,640 | 6,790 |
26 | 5,970 | 6,210 | 71~75 | 6,660 | 6,810 |
27 | 6,000 | 6,230 | 76~80 | 6,680 | 6,820 |
28 | 6,030 | 6,250 | 81~85 | 6,700 | 6,830 |
29 | 6,070 | 6,270 | 86~90 | 6,720 | 6,840 |
30 | 6,090 | 6,290 | 91~95 | 6,740 | 6,850 |
31 | 6,110 | 6,310 | 96~100 | 6,760 | 6,860 |
いずれも、鋼索線の運賃および空港線の加算運賃は、変更いたしません。
6.その他
以下の運賃・料金は変更いたしません。
・空港線加算運賃
・りんくうタウン駅~関西空港駅間の特定運賃
・鋼索線運賃
・特別急行料金、座席指定料金、特別車両料金
・定期特別急行料金、定期座席指定料金
当社の取り組み
運賃改定に関するQ&A
運賃について
改定後の運賃はいつから適用になりますか。
改定日(2023年10月1日)の始発時からとなります。
※9月30日の最終電車までは、日付が10月1日に変わった後でも、旧運賃が適用されます。
改定後の運賃はいくらになりますか。
新運賃はこちらの運賃検索サイトからご確認いただけます。
2023年9月末までに購入した定期券・回数券は、10月以降もそのまま使えますか。
お持ちの定期券・回数券の有効期限まで、そのままご利用いただけます。差額のお支払いも必要ございません。
使用開始日が10月1日以降(運賃改定後)であっても、9月30日までに購入される場合は、9月30日までの運賃で発売します。
運賃改定前に購入した乗車券を払いもどしたいのですが、払いもどし額はどのように計算するのですか。
9月30日までに購入された定期券・回数券は、10月1日以降も旧運賃を基準に払いもどし額を計算します。
小児の運賃も変わるのですか。
大人運賃の変更に伴い小児の運賃も改定いたします。小児運賃の計算方法については、現在の制度からの変更はありません。
(6才以上12才未満(小学生)の方を小児とし、大人の半額で10円未満の端数を10円単位に切り上げます。)
特定運賃とはどのようなものですか。
特に定めた区間に対して、その区間のキロ程で計算される通常運賃とは異なる運賃を設定することです。
今回の改定により、難波駅~中百舌鳥駅間に特定運賃(普通運賃のみ)を設定いたします。
なお、りんくうタウン駅~関西空港駅間の特定運賃は変更いたしません。(大人普通旅客運賃370円)
難波~中百舌鳥だけが特定運賃の適用区間となるのですか。
難波~中百舌鳥の区間内にある同額区間については、同様に特定運賃の適用区間となります。
具体的には、以下の黄色の8区間が対象となります。

身体障がい者・知的障がい者割引等の割引運賃はどうなりますか。
割引前運賃の改定に伴い、割引運賃も改定いたします。
割引運賃の計算方法については、現在の制度からの変更はありません。
詳細はこちら
鋼索線(ケーブルカー)の運賃はどうなりますか。
改定いたしません。
料金について
特急料金・座席指定料金はどうなりますか。
改定いたしません。
特別車両料金はどうなりますか。
改定いたしません。
その他
バリアフリー料金を利用した値上げも実施するのですか。
現時点で、バリアフリー料金制度を活用する予定はございません。
いつ以来の運賃改定ですか。
消費税増税に伴う改定は2019年10月1日、それを除くと1995年9月1日以来となります。
改定に関する参考情報
鉄道事業の概要
当社は、ターミナル駅である難波から泉州・和歌山を結ぶ南海本線と世界遺産・高野山を結ぶ高野線の2本の基幹路線を軸に、計8路線、営業キロ154.8㎞の路線からなり、空港線において関西国際空港への重要なアクセスを担うとともに、泉北高速鉄道との相互乗り入れやフェリーと連携した四国への連絡輸送等、大阪南部を中心に広域輸送圏を形成しております。
当社沿線と新大阪や梅田地区を結ぶ関西の新たな鉄道ネットワークとなる「なにわ筋線」については、2031年の開業を目標としており、今後の当社沿線の価値向上に大きく寄与することが期待されております。
これまでの取組み
当社は日本で最初の純民間資本による鉄道会社を前身とし、以来130余年鉄道事業を営んでおり、経年100年を超える南海本線紀ノ川橋梁等、大規模構造物を長期にわたり適切に管理するとともに、駅ホームや踏切道の安全対策も推進してまいりました。特に、沿線に海岸や山岳部を有していることから、近年激甚化する風雨等気象の影響にさらされやすい環境にある中で、お客さまの安全安心を確保するため、施設の耐震補強や安全検知システムの導入等、防災減災対策に積極的に取り組んでまいりました。
また、社会的要請の高いエレベーターやスロープ、多機能トイレ等のバリアフリー施設についても順次整備を進めてまいりました。
(1)お客さまの安全を守る施策
①連続立体交差事業の推進
南海本線では踏切での事故や交通渋滞の解消を目指し、立体交差化を推進しております。高石市内(浜寺公園~北助松間および高師浜線)の連続立体交差事業では、2016年5月の下り線(関西空港・和歌山市方面)の高架化に続き、2021年5月には上り線(難波方面)も高架上での運行を開始いたしました。現在は高師浜線の高架工事を進めております。堺市内(石津川~羽衣間)連続立体交差事業も開始し、現在、諏訪ノ森駅・浜寺公園駅を含む仮上り線工事及び一部区間の高架工事を進めております。これらの完成により難波~高石間の全区間が高架化されます。
②踏切障害物検知装置の高度化
踏切道の更なる安全性向上を図るため、踏切道内の車いすや歩行者、自転車等の障害物の検知性能に優れた平面式踏切障害物検知装置への更新を進めております。障害物の検知方法が従来の光式障害物検知装置と異なり、同装置では面で障害物を検知できることから安全性が高く、光式障害物検知装置から順次更新箇所を拡大してまいります。
③ATS(自動列車停止装置)の機能向上
列車の運行に対する安全対策として、ATS(自動列車停止装置)ではより運転保安度の高いATS-PNを導入いたしました。従来のATSでは速度超過があると非常制動により列車を停止させるものでしたが、停車駅・曲線・分岐・線路終端等、線路の条件に対して常に運転速度と制限速度パターンとのチェックを行い、自動的に制限速度まで列車を減速させることができることから、より高い安全性を確保しております。
(2)防災や減災への取組み
当社は、沿線に海岸線や山岳部があることから風雨等の気象の影響を受けやすく、近年激甚化する自然災害のリスクを低減するため、施設の防災、減災対策に積極的に取り組んでまいりました。
橋梁では異常が発生した場合に列車を緊急停止させるシステムを高野線紀ノ川橋梁、南海線男里川橋梁、南海線紀ノ川橋梁に設置完了しており、2022年度には高野線大和川橋梁にも設置を予定しております。
また、2017年の台風21号により、高野線において上古沢駅で土砂流出による法面崩壊が発生したことから、地滑りへの対策として線路に近い法面の安定性を高める工事を実施いたしました。
鉄道構造物の耐震補強については、省令に基づき、順次高架橋柱の補強及び橋梁の落橋防止対策を実施しており、高架橋柱耐震補強は対象柱1829本のうち、2022年度までに1724本の補強完了を予定しております。(進捗率94.3%)
(3)車両更新の推進
新型通勤車両8300系を2015年度~2021年度にかけて110両導入し、南海線で60両、高野線で50両を運行しております。
当車両は、ホームと車両床面の段差・隙間を低減、バリアフリー基準を満たしている車いすスペースや、スーツケース等大型の荷物に対応した手荷物スペースの確保、液晶モニターによる4カ国語案内等どなたでも快適に乗車いただける機能を保有するとともに、従来車両(6000系等)と比較して消費電力が約50%に抑制でき、車内外への騒音を低減する等、人と環境に優しい省エネ車両となっております。今後も、更新を計画的に推進し、利便性の向上と環境への配慮に努めてまいります。
(4)バリアフリー化の推進
現在、1日の利用者数3,000人以上の62駅のうち60駅において移動経路の段差解消が完了しております。また、手すり付きトイレをほぼ全駅に設置し、車いす用トイレは70駅に設置しております。さらに、お年寄りや妊婦、身体の不自由なお客さまにも広くご利用いただける多機能トイレの整備を進めております。
ホームドアについては、2019年3月に難波駅1番線のりばに全車両対応の大開口ホーム柵を設置し、利用者の安全性向上のために、戸挟防止機能やホームドアと車両扉の間の居残りも検知できるものといたしました。
ソフト面においては、駅・列車区のすべての助役を対象に「心のバリアフリー」の取組みとして「サービス介助士」の資格取得推進を図り、現在321名の社員が資格を取得しております。
(5)快適性・利便性の追求とストレスフリーな移動環境の整備
あらゆるお客さまにとって利用しやすく、快適にご乗車いただくための環境整備にも積極的に取り組んでおります。
①駅の利便性向上
和歌山市駅に、図書館、商業、オフィス、ホテル等の公益施設を含む多様な都市機能を充実させ、交流人口の増加とにぎわいの創出を目指す「和歌山市駅活性化計画」を和歌山市、和歌山県と連携して策定し、2020年に複合商業施設「キーノ和歌山」を開業いたしました。それに先立ち、駅施設についても工事を行い、2017年に供用を開始いたしました。それまで2階にあった改札口等を1階へ移設したことにより、階段等の昇降なしに駅前広場からホームへ行けるようになり、加太方面やJR線との乗換がより便利にご利用いただけるようになりました。
JR線との結節駅である新今宮駅については、難波から新今宮・新世界エリアの玄関口としてインバウンド旅客も多く、エレベーターの大型化やホームと改札を結ぶお客さま導線の見直し、お客さま案内の充実を目指したオープンカウンターの設置、通路等の美装化を実施して2022年3月から供用を開始いたしました。当エリアでは、時期を同じくして「OMO7(おもせぶん)大阪 by 星野リゾート」が2022年4月に開業する等、周辺の環境も大きく変化したことにあわせ、同駅構内の環境改善を行いお客さまの満足度の向上を図りました。
2021年7月からは、Osaka Metro御堂筋線との結節駅でもある中百舌鳥駅のリニューアルにも着手し、乗換利便性の向上に加えてコンコースの賑わいを創出することで地域にも愛される空間づくりを目指しております。
②駅トイレのリニューアル
駅利用の満足度向上を目指したトイレリニューアルを2016年度より推進し、実施予定91駅中2021年度までに56駅62カ所のリニューアルが完了しております。
③タイムリーな情報の提供
2019年にリリースした「南海アプリ」では、列車走行位置等の情報発信、列車遅延時のプッシュ通知等の運行情報のみならず、トイレ空き状況確認や席ゆずりあいアシストといった生活サポート機能を搭載し、鉄道利用の利便性をより向上させる情報提供を行っております。また、主要駅および特急全車両(特急「サザン」は座席指定車両のみ)に「Osaka Free Wi-Fi」を導入し、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う働き方や働く場所の多様化に対応すべくインターネット環境の整備を進めてまいりました。
(6)新しい技術を活用した取組み
将来の交通利用のキャッシュレス化を見据えて、2021年に非接触型のクレジットカードを用いた「Visaのタッチ決済」や既存の企画乗車券のデジタル化に向けて、QRコードを用いた「南海デジタルきっぷ」の実証実験を開始いたしました。国内のお客さまはもちろんのこと、アフターコロナを見据えたインバウンド旅客の受入基盤のひとつとして整備を進めており、乗車券類の新たな販路の拡大、MaaS事業への展開も進めてまいります。
また、駅係員が行っている乗換案内や駅構内、周辺案内等の様々な質問対応については、AIロボットを活用した実証実験でその効果を確認しているところであり、将来の労働力不足に備えた案内サービスの実用化を目指しております。
(7)鉄道需要の創出
①インバウンド旅客への対応
2010年代より急激に増加したインバウンド需要を確実に取り込むべく、様々な取組みを実施してまいりました。駅関係では関西空港駅にインバウンド専用窓口「南海チケットインフォメーション」を開設したほか、駅ナンバリングの導入や案内サインと列車行先案内盤を多言語化するとともに、列車内では手荷物スペースの設置、案内放送やマナー啓発放送、異常時案内放送を多言語化いたしました。
また、円でのお支払いに不慣れなインバウンドのお客さまのスムーズな乗車を支援するため、インバウンド専用の企画乗車券を造成し海外で販売できるシステムを整備したほか、Twitterを通じた多言語による運行情報の発信、駅係員の対応スキル向上等ソフト面の充実にも努めてまいりました。
②空港アクセスとしての機能強化
国内の利用者に向けて関西空港への快適なアクセスを提供する「関空トク割ラピートきっぷ」や関西各地につながる私鉄路線との乗り継ぎをスムーズにするアクセス乗車券を各鉄道事業者と協力して発売しております。
③鉄道ネットワークの強化
相互直通運転を行ってきた泉北高速鉄道を2014年に南海グループ化したことに伴い、両社を跨って利用されるお客さまに向けて普通運賃の乗継割引を大幅に拡大したほか、新たに座席指定制の特急「泉北ライナー」を運行、区間急行の増発等により都心部への速達性を高め、グループ全体でそのシナジーを早期に発現するため取り組んでまいりました。
④沿線地域の観光振興
当社は今まで沿線にある観光地に向けて様々な企画乗車券を造成し、旅客誘致に努めてまいりました。観光地へのアクセスや周遊をより簡単に行えるよう鉄道やバスに沿線施設のクーポン等をセットにした「高野山・世界遺産きっぷ」や「加太観光きっぷ」等の企画乗車券を発売、今後はデジタル化によりネット上でもお買い求め可能とすることで沿線外からの誘客も積極的に行ってまいります。
⑤特急車両の活用
特急車両を利用したコラボレーションも進めました。2014年にはロボットアニメの映画公開に合わせてラピート車両を赤色に塗装し、車内の座席装飾等によりアニメの世界観を表現いたしました。近年では和歌山市出身のアーティストと組み、その世界観をラッピングした車両を走行する等話題づくりと利用促進に努めました。
また、移動の快適性を高める特急指定席への乗車需要創出に向けて2020年に「南海・特急チケットレスサービス」をリニューアルし、決済方法やポイントの利用方法を改善することでより便利にご利用いただけるようになりました。
⑥新駅の開業
2012年に和歌山大学前駅を請願駅として開業いたしました。同駅は和歌山大学の最寄り駅であるとともに、大型ショッピングセンターが開業する等、通勤通学やお買い物のお客さまにご利用いただいております。
(8)沿線価値向上の取組み
沿線に海や山といった豊かな自然のほか、2つの世界遺産を中心とした観光資源を持つ当社として、沿線の「出かける場所」としての価値を高める取組みにも注力してまいりました。
世界遺産高野山エリアでは、橋本~高野山間とその沿線エリアを「こうや花鉄道」とブランディングし、2009年からは地元ボランティア団体との協働による植栽維持や車窓からの景観整備等、高野山に至る道中での魅力創造を地域と一体となって取り組んでまいりました。その「こうや花鉄道」のシンボルとして、同年より観光列車「天空」を運行しており、道中の山間風景を一望できるワンビュー座席や展望デッキを設け、ご乗車いただくことで聖地への旅気分が増幅される車両となっております。2019年には、高野山アクセスのケーブルカーを新造し、「期待感」「癒し・調和」「安全・安心」のコンセプトのもと、従来よりも大きな窓を採用し、眺望性を高めることで旅の満足度を高めております。2020年には「はじまりの聖地、極楽橋」と銘打った極楽橋駅のリニューアルを実施し、コンコースの天井絵巻による装飾、「はじまりの手水舎」や「極楽鳥の願掛羽」、大画面の行先案内盤を設置し、高野山を訪れるお客さまをお迎えしております。
2014年から和歌山県下を走る加太線の活性化策として観光路線化を目指す「加太さかな線プロジェクト」を加太観光協会、磯の浦観光協会と共同で始動し、加太エリアの交流人口拡大に努めております。観光列車として「めでたいでんしゃ」を企画し、2021年には地元和歌山市出身のアーティストのプロデュースによる車両も加えて現在4編成を運行、季節ごとのイベント等各種取組みを実施してまいりました。
その他、南大阪・和歌山エリアの定住人口増加に向け、「働く場所・暮らす場所」としての沿線価値向上策として沿線企業のイノベーションや人材開発等を支援する「#BIZ TAG NANKAI(沿線企業魅力共創プロジェクト)」に取り組んでおります。沿線企業の後継者が家業のリソースを活用した新アイデアを考える「南海沿線アトツギソン」の開催や、沿線企業と就活生のための交流型合同説明会「コタツ就活EXPO2022 BY NANKAI」を開催する等、地域産業の活性化も図っております。
今後の取組み、設備投資方針
当社は、「南海グループ経営ビジョン2027」で掲げた「良質で親しまれる交通サービスの提供」および「共創140計画」で掲げた「公共交通事業のサステナブルな経営」を具現化するため、「鉄道事業のサステナビリティを高める安全・安定的な輸送基盤の強化」と、「社会的要請に応えるサービスの高度化」の両立に向けた投資を着実に進めてまいります。
(1)「鉄道事業のサステナビリティを高める安全・安定的な輸送基盤の強化」に関する取組み
あらゆるお客さまに安全・安心にご利用いただけるように、連続立体交差事業の推進、平面式踏切障害物検知装置の導入拡大による踏切道の安全性向上、ホーム嵩上げ工事やホームドア設置によるホーム上の安全確保、近年の鉄道でのセキュリティ強化への関心の高さから車両への防犯カメラ設置による防犯対策の強化を進めてまいります。
また、激甚化する自然災害対策として、鉄道構造物の耐震補強工事、山岳区間における法面補強や倒木対策、駅および関連施設の耐震補強を確実に進めてまいります。
(2)「社会的要請に応えるサービスの高度化」に関する取組み
①移動ニーズへの対応
車両、ホーム、トイレ等、利用者がシームレスかつストレスフリーに移動できるよう安全性、バリアフリー対応、省エネ性等「人と環境に優しい」観点からの車両の新造及び更新、ホームの段差・隙間縮小をはじめとする駅施設のバリアフリー対策、使いやすく快適なトイレへのリニューアルを進めるとともに、企画乗車券のデジタル化によるキャッシュレス化対応によりお客さまの利便性を向上してまいります。
②沿線価値の向上
「選ばれる沿線づくり」を目指して、地域共創型のまちづくりの一環として中百舌鳥駅のリニューアル事業の推進、高野山への更なる誘客強化を目的として、2025年度を目標に高野線への新造観光特急車両の導入等に積極的に取り組んでまいります。
③デジタル技術の実装による新しい価値の提供
デジタルテクノロジーを多方面で活用し、日常的に利用しているクレジットカードで改札を通過できる次世代改札機の導入によりキャッシュレス化を推進いたします。また、自動運転の実証実験を近々開始するとともに、AIやドローンを活用した施設点検により効率的に安全性の向上を図り、将来予測される鉄道事業を担う人手不足の問題解決に合わせて、時代に相応しい新しい価値の提供を継続してまいります。
なお、個別の事業等に係る計画につきましては、「利用者サービスの向上策」をご参照ください。
運賃改定の理由
(1)事業環境の変化
当社は、沿線の定住人口・交流人口の増加による地域活性化を目的として、宅地開発や地域と協働した観光振興、2014年の泉北高速鉄道の南海グループ化による利便性向上等様々な取組みを実施してまいりました。また、2010年代からのインバウンド旅客の増加を契機に、インバウンド受入基盤の整備にも尽力してまいりました。しかし、沿線の生産年齢人口は、前回当社が運賃改定(消費税増税に伴う運賃改定を除く)を行った1995年をピークに今日まで減少を続けており、2020年には同年との比較で約23%減少、今後もこの傾向は継続し、2040年にはさらに20%以上減少すると予測されております。
同様に、当社の輸送人員についても、1980年代後半以降減少傾向が続いており、2020年度以降は新型コロナウイルス感染拡大の影響も受け、2021年度の輸送人員はピークであった1983年度の3.2億人から1.8億人に、運賃収入も1996年度の665億円から379億円にといずれも4割以上落ち込む結果となりました。コロナ禍によるテレワークやオンライン授業、eコマースの普及等「新たな行動様式」の定着が進み、鉄道の利用機会の減少やインバウンド旅客の回復遅れ等により、2019年度運賃収入と比較して、2021年度の定期外収入は131億円、定期収入も40億円の減収となり、営業損益は60億円の損失計上となりました。
このような行動変容に加え、上述の沿線生産年齢人口減少も相まって、鉄道の利用者数は今後もコロナ前のレベルへの回復は見込めないと想定しております。
(2)申請の理由
今後の鉄道需要増を見込みがたい中、公共交通事業としての“安全・安心・信頼”を大前提としたサステナブルな鉄道輸送を実現していくためには、車両、駅施設、踏切等多岐にわたる諸設備に対して基本的な性能を充足するだけでなく、バリアフリーや環境対策、利便性、防犯等社会変化に応じた質を高める取組みと効率性を追求することにより、事業の成長を持続していく必要があります。
そのためには、現段階で将来に先送りすることのない計画的な設備投資が必須となっており、今後もコロナ禍以前の設備投資水準をもって、事業上のニーズ及び社会から要請される価値に対応していく必要があると認識しております。
しかし、「経営合理化の状況及び今後の取組み」に記載のとおり、これまであらゆる経営合理化策やコスト削減に努めてまいりましたが、1995年の運賃改定以降28年間維持してきた現状の運賃水準では、上記設備投資による安全・安定的な輸送基盤の強化や、社会的要請に応えるサービスの高度化といった価値の持続的提供には限界があると判断し、当社の最大限の経営努力の継続を前提としてお客さまに費用の一部をご負担いただきたく、運賃の改定を実施させていただくことといたしました。
今後も当社では、これまで培ってきた安全・安心の運輸事業の歴史とその責任を、“人と人” 、 “まちとまち”、そして“人とまち”をつなぐ多様なモビリティ事業への深化で具現化し、未来につなげていくという公共交通事業者としての使命を果たしていく所存です。
主な改定の内容
(1)改定日 2023年10月1日(日)
(2)改定率・増収率一覧
(3)初乗り運賃 180円(現行運賃 160円)
(4)定期運賃平均割引率 通勤37.0%(現行 38.8%)
通学80.2%(現行 79.1%)
鉄道部門収支の実績及び推定(実績年度及び平年度の鉄道部門収支)
運賃収入内訳
表中の実績を除く収入、支出は申請上の計算式に基づく現時点での推計値
金額は端数処理のため、各項目の合計が一致しない場合があります
需要見通し(輸送人員の推移および今後の見通し)
2022年度以降は申請上の計算式に基づく現時点での推計値
設備投資実績・ 計画
(1)設備投資実績と計画(過去5ヶ年度~平年度)
各項の億円未満切り捨て
(2)主要プロジェクトの内容
①安全対策(2022~2026年度 投資額約384億円)
・連続立体交差事業(南海線高石市内及び堺市内、高野線堺市内)
・踏切障害物検知装置(平面式) 、踏切支障報知装置等設置
・鉄道構造物耐震補強(高架橋柱等)
・自然災害対策(洗掘対策、法面補強、落石防護工事等)
・車両新造、更新(人と環境にやさしい新造車両への置き換え)
②サービス改善(2022~2026年度 投資額約113億円)
・バリアフリー工事(エレベーター設置、ホームの段差・隙間縮小、中百舌鳥駅ホームドア設置等)
・駅総合案内センターの新設(係員無配置駅の一元管理)
・駅トイレリニューアル
・自動運転実証実験
③輸送力増強(2022~2026年度 投資額約100億円)
・変電設備の更新
・次世代駅務機器の導入
経営合理化の状況及び今後の取組み
(1)これまでの取組み
鉄道輸送の安全性や安定性を健全に維持向上することを前提とし、公共交通機関として社会的要請に応えながら、より良いサービスの提供を継続していくため、当社では早期から様々な経営合理化を行ってまいりました。
①列車運行体制
支線のワンマン化については、2000年以降順次導入しており、2022年現在、高野線汐見橋~岸里玉出間、橋本~極楽橋間(2両編成のみ)、高師浜線、多奈川線、加太線、和歌山港線(2両編成のみ)の区間においてワンマン化しております。
②路線の廃止・譲渡
路線の見直しでは、和歌山港線において2002年に和歌山港~水軒間、2005年には久保町、築地橋、築港町の各駅をそれぞれ廃止いたしました。また、貴志川線についてはワンマン化をはじめ、イベント電車の運行やサイクルトレイン、ダイヤの見直し等の収支改善に取り組みましたが、2006年に和歌山電鐵へ譲渡、事業継承いたしました。
③駅運営体制
お客さまのご利用数が少ない駅については、インターホンでのお問い合わせ対応や自動改札機等の状態監視を駅長所在駅から遠隔にて行えるようシステムを導入し、サービスレベルを極力落とすことなく省力化を図ってまいりました。
④生産性向上策
鉄道部門人員数の推移については、所要員の削減や一部業務の外部移管、希望退職と退職金制度の見直し、その後も事業運営体制の省力化を実施した効果により、現在の従業員数は前回運賃改定を実施した1995年度と比較して1,000人以上削減し、当時の約2/3の水準となっており、人件費も約99億円減少しております。
⑤コロナ禍での対応策
新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う更なるコスト削減対応として、特急ラピートの一部運休や最終列車の運転時刻繰り上げ、これに伴う夜間の保守作業の効率化を行うとともに、安全に支障しない水準での設備投資の抑制や修繕費等経費の削減、役員および管理職の報酬減額や管理職を対象とする希望退職の募集、従業員給与の見直しも行いました。
また、事業構造改革として組織の統廃合によるスリム化や係員業務のマルチタスク化を推進するとともに、外部のコンサルタントを活用した外注費や委託費の一層の削減、動力費の契約見直し、損害保険契約の見直し等も行いました。
(2)今後の取組み(デジタルテクノロジーの活用)
沿線労働人口の減少に伴い、将来の鉄道事業を担う人手不足が予測される中にあっても、公共交通機関の役割を的確に果たしていくべく、デジタルテクノロジーの活用により、業務の効率化・合理化を図ってまいります。
①駅・列車運行のオペレーション
駅業務については、2023年度中に「駅総合案内センター」を新設し、遠隔対応している駅業務を一元化することにより、さらに効率化を図ってまいります。
運転業務においては、現在各支線で実施しているワンマン運転について2024年度を目標に南海本線の一部区間に拡大すべく検討を進めております。また、自動化レベルGoA2.5(前頭運転台に運転士以外の係員が乗務)による自動運転化を実現させるべく、2022年度は安全性評価に係る専門家・有識者の知見を得ながら実証実験に向けての準備を進めており、2023年度には和歌山港線において、試運転車両を用いた実証実験の実施を予定しております。
②メンテナンス体制
保守業務については、鉄道輸送の安全性を確保する上で欠かせない日常的な点検の効率化を進めてまいります。現在の稼働時間を基本とした点検保守体制から、設備の状態を常時監視し、タイムリーなメンテナンスを行うことで安全性を脅かす事象を未然に防止する「予防保全」を取り入れた点検保守体制とすることで、安全性や効率性を向上させるべく、デジタルテクノロジーを活用した実証実験を進めております。
また、施設点検におけるドローンの活用についても、鉄塔や高架下等の点検業務の高精度化、災害現場のリアルタイムの映像の配信を、各現場において活用できる環境づくりを進めております。
発売している主な企画商品
当社では、増収に向けた取組みとして、世界遺産である「高野山」をはじめとする多くの観光地や、世界への空の玄関口である関西国際空港等へ、便利に当社をご利用いただけるように各種お得なきっぷを販売しております。
(1)沿線観光きっぷ
(2)関西空港アクセスきっぷ
(3)訪日外国人専用きっぷ
「NAMBA Access Rapi:t Ticket」
関西空港駅から難波、新今宮駅又は天下茶屋駅間の特急ラピート往復割引乗車券となんばパークス、なんばCITY及びなんばスカイオで使用可能なショッピングクーポンが付いた、お得なきっぷです。
「Rapi:t Economy Ticket」
関西空港駅と難波駅、新今宮駅又は天下茶屋駅相互間の特急ラピート片道割引乗車券です。
「NANKAI ALL LINE 2day Pass」
任意の2日間、南海全線乗り放題のお得な乗車券です。特典施設・店舗で割引特典等も受けられます。
利用者サービスの向上策
「南海グループ経営ビジョン2027」で掲げた「良質で親しまれる交通サービスの提供」及び「共創140計画」で掲げた「公共交通事業のサステナブルな経営」を具現化するため、「鉄道事業のサステナビリティを高める安全・安定的な輸送基盤の強化」と、「社会的要請に応えるサービスの高度化」の2つの観点から、お客さまサービス向上策を実施してまいります。
(1)鉄道事業のサステナビリティを高める安全・安定的な輸送基盤の強化
①安全対策
ア、ホームドアの設置
ホームにおけるお客さまの安全対策として、中百舌鳥駅については、Osaka Metro御堂筋線との乗換利便性向上及び店舗面積の拡大を含めた魅力向上を図るためのリニューアル工事に続いて、難波方面行きホームの段差・隙間縮小工事及び4番線にホームドアを設置することでお客さまに安全にご乗車いただける環境を整備いたします。なお、極楽橋・和泉中央方面行きホーム嵩上げ工事及び4番線以外のホームドア整備に関する検討を引き続き行ってまいります。
他駅についても、乗降客数やラッシュ時のホーム混雑状況等を考慮して、引き続き検討を行ってまいります。
イ、防犯対策の強化
強化が求められる車内の防犯対策については、2022年度中に車内防犯カメラの試験を開始し、今後導入する新造車両から、順次設置を進めてまいります。また、全乗務員室への防護盾の設置を2022年度中に完了し、乗務員への定期的な防犯訓練を引き続き実施してまいります。
ウ、踏切道への対策
連続立体交差事業については、自治体と協力して、南海線高石市内及び堺市内の計画を推進してまいります。高野線堺市内については、2022年3月に都市計画事業認可を取得し、堺市と協力しながら当社において鉄道の詳細設計を進めております。各エリアでの連続立体交差事業の推進により、踏切事故と交通渋滞を解消するとともに高架下を有効活用し、“まち”としての賑わい創出を図ってまいります。
また、踏切道の更なる安全性向上を目的に、平面式踏切障害物検知装置を2019年度から導入しております。これまでの踏切障害物検知装置より踏切道内の車いす、歩行者、自転車等に対して検知性能を高めることが可能となる同装置について、2026年度までに計44踏切道への導入を計画しております。
②災害対策
2021年度に発生した輸送障害14件中10件が自然災害を原因とするものであり、海岸線や山岳部を運行する当社においては、激甚化する自然災害への対策が今後ますます求められることから、鉄道構造物耐震補強工事、洗掘対策、法面補強、倒木対策、落石防護工事、駅及び関連施設耐震補強等を進めてまいります。
ア、地震への備え
耐震補強工事のうち高架橋柱については、国土交通省令で定められている対象箇所の補強を2024年度までに完了させ、2025年度以降は省令対象外の箇所についても、重要路線を中心に補強が望ましい箇所に対して工事を進めてまいります。また落橋防止対策は省令で定められている対象箇所を2027年度末までに整備してまいります。
イ、風水害への備え
防災カルテの作成、気象情報を活用した速やかなリスク評価、津波警報発令時の円滑な避難誘導を可能とするハザードマップの現場従業員への配付、従業員に対する定期的な防災教育の実施等、ソフト面でも被害最小化のための取組みを継続、強化してまいります。
(2)社会的要請に応えるサービスの高度化
①ストレスフリーな移動空間の提供
ア、車両の安全性、利便性の向上
6000系をはじめ一般車両を順次新造車両に置き換えるべく、計画的に更新を進めてまいります。新型車両には、バリアフリーガイドラインに沿った車内の旅客案内表示器を整備し、2026年度末の設置率約60%を目指してまいります。さらに、新型車両の使用電力量は従来型の抵抗制御車両と比べ概ね半分程度であることから、当社グループにおけるCO2排出量削減目標(2030年度までに、2013年度比46%以上削減)の達成にも大きく貢献いたします。
なお、新型車両の導入は、ホームドア整備を推進する際の課題である駅での扉位置の統一に寄与するものであり、当社において今後より一層重要となってまいります。
支線で運用しているワンマン車両についても、現在使用している1960年代後半から1970年代前半にかけて製造された2200系車両から、2000系車両をワンマン改造し、置き換えを進めてまいります。
また、「こうや花鉄道」ブランドのもと、世界遺産高野山への更なる誘客強化策として顧客体験を向上させるコンテンツを充実させることを目的とし、2025年度を目標に高野線に新たな観光特急車両を導入する計画としております。
イ、バリアフリー化の推進
1日の利用者数3,000人以上の駅については、62駅のうち60駅において移動経路の段差解消が完了しており、残りの駅についても整備計画を策定中です。また、自治体の基本構想がある1日の利用者数2,000人以上の駅についても、自治体と協議のうえ整備計画を策定してまいります。なお、既に整備を完了した駅においても、お客さまのご利用状況に応じたきめ細やかな整備を検討してまいります。
ホームの段差・隙間対策については、ホーム嵩上げ工事(段差縮小工事)2駅、列車とホームの隙間を埋めるくし形ゴムを用いた隙間縮小工事11駅を2024~2026年度に実施する計画としております。
駅係員不在時にリモートでお客さま対応を行うためのインターホンについては、現在音声対応のみとなっているものからカメラモニター付きインターホンに順次置き換えていくことで、お客さまへの案内の充実に努めてまいります。
ソフト面についても、サービス介助士の資格取得、車いすをご利用のお客さまや視覚・聴覚に障がいをお持ちのお客さまへの介助技術を実践的に学ぶ実技教習、障がい者団体にご参加いただく駅施設見学・体験会の開催、他社局や外部団体と連携した「声かけ・サポート」運動の推進等、「心のバリアフリー」に率先して取り組むことで、介助を必要とするお客さまをはじめ、当社を利用されるすべてのお客さまに「安全・安心」にご利用いただけるよう今後も努めてまいります。
ウ、トイレリニューアルの推進
順次進めている駅トイレのリニューアルにつきましては、引き続き整備のペースを落とすことなく、お客さまに気持ちよくご利用いただけるよう整備を進めてまいります。ベビーチェアやベビーシートの設置、大便器の洋式化や温水洗浄便座への更新により、お子さま連れのお客さまはじめ多様なお客さまに使いやすく清潔なトイレへとリニューアルいたします。2026年度までに実施予定の9割以上の駅にてリニューアルを完了させる予定となっております。
②選ばれる沿線づくり
世界遺産高野山への更なる誘客強化策として、2025年度を目標に新たな観光特急車両の導入を計画しております。個人のお客さまから旅行代理店のツアーにもご利用していただきやすい運行ダイヤの設定や、車内での飲食サービスの提供も検討しており、高野山へのアクセス手段としてだけでなく、「乗車すること」自体を目的化していただけるサービスの提供を目指してまいります。
③新しい利用サービスの拡充
2023年には、PiTaPa・ICOCAでのご乗車を対象とした新たなポイントサービスの導入を予定しております。ご利用回数や金額に応じてminapitaポイントを付与するとともに、特急チケットレスサービスのポイントとminapitaポイントを相互に交換できるサービスを検討しております。当社の発行するクレジットカード「minapitaカード」のポイントとして、すでに当社商業施設等で幅広く導入している「minapitaポイント」を鉄道利用と深く結びつけることにより、南海グループ一体となってご利用いただくお客さまの利便性を向上させてまいります。
また、乗車券をデジタル化することによる新しいビジネスモデルも検討しております。
④デジタルテクノロジーの活用
キャッシュレス社会の進展を受けて、インバウンド旅客をはじめとする交通系ICカードを持たないお客さまでも、普段お使いのクレジットカードでスムーズに改札を通過、決済できる利用方法や乗車券のデジタル化に活用が期待されるQRコードを利用した乗車券に対応した改札機の設置を進めてまいります。また、乗車券のご利用から得られるデータを分析活用することにより、お客さまが求める商品の造成や南海アプリの機能拡充等、行動変容やニーズの変化に機敏に対応したサービスを提供することにより、新しい消費行動につなげてまいります。
「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
「ICOCA」は西日本旅客鉄道株式会社の登録商標です。
「PiTaPa」は株式会社スルッとKANSAIの登録商標です。