リスクマネジメント

基本的な考え方

当社は、持続的な成長と社会的責任を果たすため、リスク管理は最重要事項であると考えています。リスクマネジメントの国際的なガイドラインであるISO31000及びCOSOを基に、2022年度からはERMに基づくリスク管理体制を導入しています。リスク対策の専任部署として「リスク管理室」を設け、責任者としてリスクマネジメント担当の執行役員を任命しています。リスク対策の基本方針となる「リスク管理規程」を定め、リスクマネジメントに取り組んでいます。

 

リスク管理委員会の設置

当社では、社長を委員長とする「リスク管理委員会」を設置しています。リスク管理委員会は原則として月1回開催し、当社グループ全体の総合的・一元的なリスク管理を行うことにより、当社グループの経営に重要な影響を与える可能性のあるリスクのマネジメントに努めています。

 

リスク管理体制

最重要リスクへの取組み

「リスク管理規程」に基づき、リスク管理委員会において優先的に取り組むべき最重要リスクを決定しています。最重要リスクは、ESG関連リスクを含む当社グループをとりまく80のリスク項目について発生頻度と影響度を評価し作成したリスクマップから決定しました。最重要リスクは上図の①~⑧を「業務リスク」と「経営リスク」に区分しています。業務リスクは、「自然災害・事故」「人事・労務」「IT関連」「コンプライアンス」「レピュテーション」、経営リスクは「経済・ビジネス」「財務」「環境」とし、リスク対策の推進責任者であるリスクオーナーが対策計画に取り組むことで、実効性の向上を図っています。
これらリスク対策の取組み内容については取締役会に定期的に報告しています。

※ESG関連リスク
環境:異常気象の激甚化、化石燃料の高騰、環境汚染等
社会:人材確保、ハラスメント、差別、人権侵害等
ガバナンス:反社会的勢力との取引、取引先との癒着・贈収賄等

 

3つの防衛線

「リスク管理委員会」は、リスク対策の取り組みの執行状況をリスクオーナーからの報告によりチェックします。リスク管理委員会での審議内容は監査等委員会に連携するとともに、定期的に取締役会に報告を行っています。(2022年度はリスク対策に関する報告は1回)
2023年度は、2022年度取り組みの内容を踏まえ、リスク管理委員会(第2線)によるリスクオーナー・リスクマネージャー(第1線)への現状把握、牽制強化に努めています。また、内部監査室(第3線)は、リスク対策計画の実施状況を監査テーマとして掲げ、監査を実施しており、いわゆる「3つの防衛線」の体制を整えております。
なお、委員会の内容は定期的に取締役会に報告を行っています。(2023年度はリスク対策に関する報告は2回を予定)

 

事業等のリスク

当社グループの事業その他に関するリスクについては、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項及び必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項について積極的な情報開示の観点から以下に記載しています。当社グループでは、リスク管理委員会を設置するなど、グループ全体の総合的・一元的なリスク管理を行うことにより、当社グループの経営に重要な影響を与える可能性のあるリスクの回避または低減に努めています。なお、発生の回避及び発生した場合の対応を一部記載していますが、係る対策が必ずしもリスク及びその影響を軽減するものではない可能性があることにご留意ください。


本項については、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は2023年3月31日現在において判断したものです。
なお、現在、OHSAS18001認証を受けている事業所はありません。

 

(1) 経済情勢等

少子高齢化、沿線地域における人口、雇用情勢及びインバウンドをはじめとする関西国際空港利用者数の動向等により、鉄道事業をはじめとする運輸業における旅客が減少することや、国内外の景気動向、消費動向及び市場ニーズの変化により、不動産業、流通業、レジャー・サービス業等における売上高について影響を受けることがあります。このほか、為替の変動、原油価格の高騰による電力料金の値上げや資材価格の高騰が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、投資有価証券に係る株価変動、保有不動産の地価変動等により株式や低収益物件等の減損処理が必要になる場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 競合

鉄道事業におきましては、一部路線が他社と競合しています。さらに、自家用車やバイク等の輸送手段への移行が今後も影響を及ぼす可能性があります。

バス事業におきましては、2002年2月から乗合バス事業に係る需給調整規制が完全に撤廃され、新規路線参入については自由競争下にあるため、競争の激化により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社の経営拠点であるなんばエリアにおいて経営する商業施設「なんばCITY」及び「なんばパークスShops&Diners」につきましては、大阪市内における他のエリア(梅田、天王寺等)の大型商業施設と競合関係にあります。

 

(3) 法的規制

鉄道事業におきましては、鉄道事業法(昭和61年法律第92号)の定めにより、経営しようとする路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならず(第3条)、さらに旅客運賃及び料金(上限)の設定・変更につき、国土交通大臣の認可を受けなければならない(第16条)こととされています。なお、これらの国土交通大臣の許可及び認可については、期間の定めはありません。

また、同法、同法に基づく命令、これらに基づく処分・許可・認可に付した条件への違反等に該当した場合には、国土交通大臣は期間を定めて事業の停止を命じ又は許可を取り消すことができる(第30条)こととされています。鉄道事業の廃止については、廃止日の1年前までに国土交通大臣に届出を行う(第28条の2)こととなっています。

現時点におきまして同法に抵触する事実等は存在せず、鉄道事業の継続に支障を来す要因は発生していません。しかしながら、同法に抵触し、国土交通大臣より事業の停止や許可の取消を受けた場合には、事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。

なお、上記のほか、当社グループが展開する各事業については、さまざまな法令、規則等の適用を受けており、これらの法的規制が強化された場合には、規制遵守のための費用が増加する等、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 大規模販売用不動産

大規模販売用不動産につきましては、計画的な分譲を実施することにより、資金回収をはかっていますが、主に郊外地域における土地価格の下落や住宅需要の都心回帰の傾向がさらに進んだこと等により、郊外型大規模住宅開発には厳しい状況が続いています。今後も計画的な分譲を進めてまいりますが、少子化による住宅需要減や都心回帰の顧客志向がますます強くなることも予想されますので、資金回収の遅れが生じる等の影響が出る可能性があります。

 

(5) グループ会社に関する事項

当社連結子会社である南海辰村建設株式会社は、グループ会社で唯一の上場会社であり、またグループ内の中核会社であるため、当社ではこれまでに第三者割当増資の引受や支援金の提供等の経営支援を行っていますが、同社において、想定外の受注環境の悪化等に見舞われた場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 投資

鉄道事業における投資につきましては、連続立体交差化工事や安全運行確保のための各種更新投資が長期にわたりかつ多額となるため、その資金調達や金利負担が当社グループの業績及び財務状況に影響を与えています。

 

(7) M&A

成長戦略としてのM&Aの実行に際しましては、外部専門家等も交え、対象会社の財務内容等に関するデューディリジェンスを綿密に行いますが、当該デューディリジェンスの過程で検知できなかった偶発債務や未認識債務等が顕在化した場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、M&A実行後の事業環境の変化に伴い、対象会社の収益力が低下した場合や期待するシナジー効果が実現できない場合、減損損失を認識する必要が生じ、投資の回収が不可能となる等、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 退職給付会計

退職給付に係る資産及び退職給付に係る負債につきましては、従業員の退職給付に備えるため、当連結会計年度末における見込額に基づき、退職給付債務から年金資産の額を控除した額を計上しています。数理計算上の差異は、その発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(3年から11年)による定額法により翌連結会計年度から費用処理することとしています。債務の計算における前提が変更された場合や、一層の運用利回りの悪化があった場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 有利子負債

当社は、その事業の特性上、借入金依存割合が高い状況にあり、設備投資やM&A実行資金を使途に多額の社債発行や銀行借入を行った場合、有利子負債残高がさらに増加することが考えられます。資金調達手段の多様化をはかり、財務健全性の維持に努めますが、金利変動により金利負担が増加した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、格付機関が当社の格付を引き下げた場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 自然災害等

南海トラフ地震等の大規模地震やそれに伴う津波の発生、台風等による風水害・地すべりといった自然災害により、当社の設備やインフラが多大な被害を受けた場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。高架橋柱をはじめとする鉄道施設やビル等の耐震補強を計画的に実施するほか、橋梁等の防災・減災のため各種対策を講じています。

なお、(11)、(12)の事故発生等を含め、大規模自然災害が発生した場合の対処として、災害対策規程等の制定や、大規模地震を想定した事業継続計画(BCP)の策定、震災対応型コミットメントラインの導入等、被害を最小限にとどめる管理体制の強化をはかっていますが、発生の地域、規模、時期、時間等により、被害の範囲が大きくなる可能性があります。また、当社施設に直接の被害がない場合であっても、大規模自然災害に伴う、第3種鉄道事業者の施設被害や電力供給の制限、列車運行に必要な部品の調達困難等により、鉄道輸送に大きな支障が出る可能性があります。

このほか、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、インバウンド需要や行動様式の変化による鉄道事業をはじめとする運輸業での輸送人員の減少、ECの拡大による商業施設のニーズの変化などによって、当社グループの業績及び財務状況は影響を受けています。本感染症の影響とそれに伴う社会構造の変化は、当社グループをとりまく事業環境や将来の事業運営の在り方に変化・変革をもたらすものと認識しています。

 

(11) 事故・システム障害等の発生

安全安心な輸送サービスの提供を最大の使命とする運輸業を基軸に事業展開をしている当社グループにおいて、事故や自社設備の火災・爆発等が発生した場合、並びに重大インシデント(事故が発生する恐れがあると認められる事態)が発生した場合には、社会的信用の失墜を招くばかりでなく、その復旧及び損害賠償請求等により業績に多大な影響を生じる可能性があります。

また、人的原因や機器の誤作動等により、システム障害が発生した場合、事業運営に支障を来すとともに、施設の復旧や振替輸送に係る費用の発生等により、当社グループの社会的信用の失墜や業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。事故・システム障害の未然防止のため、保安諸施設や駅務システムの整備、更新や定期的なメンテナンスの実施、従業員教育の徹底等、さらなる対策に取り組みます。

 

(12) 第三者行為やテロ活動等

第三者行為による事故発生やテロ活動及び不正アクセス等につきましても、不審物への警戒や施設内巡回の強化及び情報セキュリティの確保等の対策を行っていますが、万一、テロ活動等が発生し、その影響を受けた場合には、事業活動に支障が出る可能性があります。

 

(13) 保有資産及び商品等の瑕疵・欠陥

当社グループが保有する資産について、瑕疵や欠陥が発見された場合、又は健康や周辺環境に影響を与える可能性等が指摘された場合、その改善・原状復帰、補償等に要する費用が発生する可能性があります。また、当社グループが販売した商品、売却した不動産、受注した工事、提供したサービス等について、瑕疵や欠陥が発見された場合、その改善及び補償等に要する費用の発生や社会的信用の失墜等により、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 気候変動への対応

当社グループでは、気候変動の緩和に向けた脱炭素社会への移行に伴う費用増や、気候変動による激甚化した災害が発生した場合に、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。その対処として、気候変動による事業への影響を想定し、リスクと機会への対応について事業戦略と一体化していくための取組みを行っています。また2021年9月には、当社は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同を表明し、その提言に基づいた情報開示を進めています。引き続き、サステナブル重要テーマ(マテリアリティ)である「地球環境保全への貢献」への取組みを通じて、持続可能な社会の実現に寄与していきたいと考えています。

 

(15) 人事政策

鉄道、バス等の運輸業におきましては、労働集約型の産業構造であるため、事業運営上必要な人財の安定的な確保が求められます。また、「選ばれる沿線づくり」や「不動産事業の深化・拡大」といった事業戦略を推進していくために多様で専門的な人財の確保・育成に努める必要もあります。これらの政策が環境変化等により遅れた場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(16) 情報資産の管理

当社グループでは、各事業においてお客さまや従業員の個人情報だけではなく、機密情報をはじめとする重要情報を保有しています。このため、リスクマネジメント強化を目的として、情報セキュリティ基本方針等の社内規程を整備するとともに、従業員に対する教育等に取り組んでいます。しかしながら、何らかの原因により情報が流出した場合には、損害賠償責任が発生する可能性があるほか、当社グループの社会的信用が失墜し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17) コンプライアンス

当社グループでは、企業倫理の確立をはかり、コンプライアンス経営を維持・推進するために、コンプライアンス遵守に関する教育を定期的に実施する等の啓発活動に努めています。また、法的・倫理的問題を早期に発見し、是正していくための体制として内部通報制度を設けていますが、重大な不正・不法行為が発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜や業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(18) 重要な訴訟

現在のところ、特に経営に重大な影響を及ぼすような重要な係争事件はありません。


今後の事業展開におきましても、あらゆる取引において契約内容の真摯な履行に努めますが、相手方の信義に反する行為に対しやむを得ず訴訟等を提起する場合や、相手方との認識の相違又は相手方悪意により、訴訟等を提起される可能性があります。さらに、訴訟等の結果によっては、当社グループの社会的信用の失墜や業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。