環境マネジメントの深度化
基本的な考え方
鉄道は他の輸送機関に比較して環境に優しい乗り物と言われており、自家用乗用車と比較し1人1kmを運ぶ際のCO2排出量が約1/5※となっています。当社グループでは、鉄道を中心とした公共交通ネットワークを整備し、駅を拠点に公共交通ネットワークとの連動によるまちづくりや関連事業および環境保全活動を進め、地域の発展に加え環境負荷の低減に貢献しています。
環境マネジメントにおいては、環境法令順守の徹底に加え、ISO14001で求められる水準での環境マネジメントシステムの自主的運用の定着および環境情報開示の向上を目指しています。気候変動対策に関しては、TCFD提言に賛同の上、マネジメントを強化し、同提言に基づく情報開示を実施しています。
環境マネジメントの深度化を目指すためには、社員一人ひとりの環境保全意識の維持と向上が非常に重要です。そのため、社員教育はもとより、高い環境意識を持って積極的、主体的に環境活動に取り組む社員を認定・表彰する独自の制度を運営するなど、環境活動および沿線活性化に社員が主体的に参画・貢献していく企業風土の醸成に取り組んでいます。
出典:国土交通省Webサイト(運輸部門における二酸化炭素排出量)
「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」の提言に賛同
気候変動への対応とTCFD提言への賛同
世界では平均気温が上昇、極端な高温、大雨の頻度や洪水が増えており、気候危機ともいえる状況にあります。そこで、当社では気候変動による事業への影響を想定してリスクマネジメントを強化し、その対策を事業戦略と一体化していくための取り組みを始めています。2021年9月には気候変動に起因する金融市場の不安定化リスクの低減を目的としたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)※の提言に賛同しました。
同提言に基づいた情報開示はこちら
国際機関である金融安定理事会によって2015年に設立。気候変動に起因する自社の事業リスクと事業機会を評価し、財務上の影響を把握して情報開示することを提言しています。
南海電鉄グループ 中期環境目標(2021年度~2024年度)
「南海環境ビジョン2030」の達成に向けて、主要施策・達成目標を織り込んだ「中期環境目標」を設定しています。
中期環境目標の達成に向けて、各項目で取り組み施策を進めた結果、2022年度は目標を概ね達成することができました。
環境課題 | 中期環境目標と主要施策(2024年度までの達成目標) | 2022年度の実績[2022年度達成目標] | 評価 | 2023年度の達成目標 |
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1.地球温暖化の 抑制 | 南海グループのCO2排出量の削減 ・車両の省エネ化・更新(鉄道・バス) ・所有不動産・流通施設での省エネ施策の推進 ・新規取得物件のエネルギー有効活用 | ・2022年度CO2排出量実績 | ◎ | ・CO2排出量 30%削減(2013年度比) |
再生可能エネルギーの活用 ・鉄道並びに不動産・流通施設への再生可能 | ・不動産・流通施設への再生可能エネルギー | 〇 | ・不動産・流通施設への再生可能 | |
2.循環型社会 の実現 | 沿線におけるスマートシティ形成に向けた準備 ・沿線におけるスマートシティ形成に向けた | ・公民連携により設立(2022年6月)された ・NANKAIオンデマンドバスの実証事業を実施 | 〇 | ・SENBOKUスマートシティコンソー |
資源の有効利用と廃棄物の3Rの推進 ・取水量原単位 5%削減(2019年度比) ・廃棄物のリサイクル率3%向上(2021年度比) ・本社事務所の紙使用量70%削減(2019年度比) | ・取水量原単位 3.2%削減 ・廃棄物のリサイクル率 2.7%向上 ・本社事務所の紙使用量 59%削減 | 〇 | ・取水量原単位 4%削減 ・廃棄物のリサイクル率 2%向上 ・本社事務所の紙使用量 | |
3.生物多様性 の保全 | 沿線エリアでの生物多様性の保全 ・「多奈川ビオトープ」生物生息環境の創出 ・全ての取引先へのグリーン調達ガイドライン周知と ・一般向けイベントの開催(年間4回) | ・「多奈川ビオトープ」維持管理の実施 ・南海グループ資材調達方針を制定(2022年8 | 〇 | ・「多奈川ビオトープ」維持管理の実施 ・環境方針等未制定の取引先に協力依頼 ・一般向けイベントを年間4回開催 |
4.環境 マネジメントの 深度化 | 気候変動リスクの分析と開示 ・TCFD提言に沿った情報開示 ・CDP評価 A-(気候変動) | ・鉄道、不動産・流通事業のグル-プ会社に ・2021年度実績の CO2 排出量 ・CDP評価 B(気候変動) | 〇 | ・TCFDシナリオ分析実施・開示範囲の拡大 ・CDP評価 B(気候変動) |
ISO14001認証と同等に評価される環境 ・ISO認証と同水準の環境マネジメント | ・2022年4月から自主的運用に移行し、 ・本社2部門(鉄道営業本部施設部・不動産 | 〇 | ・環境マネジメントシステムの自主的運 ・本社2部門と千代田工場で | |
従業員の環境保全意識の向上と環境法令順守の徹底 ・ECOニスト認定100人、ECOニストアドバンス認定35人、 ・環境法令順守のための管理体制の構築 | ・ECOニスト認定264人[100人]、ECOニスト ・環境法令研修を実施、法令対応を適時に案内 | 〇 | ・ECOニスト認定100人、ECOニスト ・グループ会社環境調査の実施 | |
5.グリーンビル ディングの拡大 | 環境配慮型建物(グリーンビルディング)の拡大 ・新規開発物件における認証取得 | ・北大阪トラックターミナル2号棟において | 〇 | ・新規開発物件もしくは既存施設に |
6.適切な情報 発信 | 統合報告書の発行 ・外部から高評価を得られる報告書の作成 ・「KPIの進捗状況」「ESG開示項目」の充実 | ・統合報告書2022の発行 | ◎ | ・統合報告書2023の発行 |
その他 | さまざまな環境活動の実施 ・なんかいの森を活用したオフセット・クレジットの | ・J-クレジットの取得拡大に向けた ・南海国際旅行㈱主催による | 〇 | ・2023年度中に検証を実施し、 |
◎:目標を超過して達成した 〇:目標を達成した △:目標を達成しなかった
社員の環境保全意識の向上
環境研修の実施
管理職等を対象にした環境経営研修を実施しています。また、グループ会社を含めて、昨今の法改正に焦点を当てた環境法令研修も実施しています。
環境社会検定試験(eco検定)の奨励
当社では東京商工会議所が主催する「環境社会(eco)検定試験」の受験を推奨しており、2008年度より合格者に対して受験料などの補助を行っています。多くの社員に環境問題の基本的な知識を持ってほしい、あるいは再確認してほしい、環境負荷低減活動への意識を高めてほしいという趣旨に基づいています。2008年度のeco検定保有者は僅か4人でしたが、継続的な社員への啓発活動により、2022年度には413人に増えています。
eco検定資格保有者数の推移
ECOニストプログラム
当社では、2014年4月1日に、独自のECOニストプログラムを導入し、継続的に取り組んでいます。ECOニストとは、高い環境意識を持って積極的、主体的に環境活動に取り組む当社の社員を指します。当社のおかれる厳しい経営環境を打開するための意識改革の必要性から始まった取り組みであり、環境面からの対応策として「沿線エリア、当社施設の魅力向上につながる環境活動の活性化を図る」「沿線活性化、環境活動に社員が主体的に参画・貢献していく企業風土を醸成する」の2つを主な目的としています。
ECOニストプログラムでは、まず、社内各部門で実施している環境活動を集約しボランティアとして参加を募ります。社外で実施される環境活動についても、自己申請により対象に加えます。環境活動等に参加して得られるECOニストポイントが年2ポイント以上で「ECOニスト」として認定し、認定証を授与します。
2017年度からは、インセンティブ強化のため、ECOニスト認定3回毎の表彰制度であるECOニストアドバンスの表彰と副賞授与を実施しています。
初年度の2014年度は60人の目標に対し43人しかECOニストが誕生しませんでした。そこで2015年度は対象活動(道普請や清掃活動、草刈活動等)を増やすとともに、参加者募集やECOニスト認定者の発表等、社内での情報発信を増やしたところ、年間60人の認定の目標に対し100人のECOニスト認定となりました。その後も年々ECOニスト認定者数は増え、2018年度以降は毎年200人前後となっています。
ECOニスト認定者数の推移
2020~2021年度はコロナ禍により複数の活動を自粛