経営の最近10年

2022~2024

中長期的な企業像と成長戦略の策定

“2050年の企業像”を発表

コロナ禍を通じて、世の中の変化は激しく、かつ突然起こり得ることを強く認識することとなった。これからの当社グループの経営を考えるにあたり「バックキャストによる戦略構築」によって未来を見据えるとともに、激しい変化の中での「判断の拠りどころ」をつくるため、「どのような企業になりたいか」「社会から必要とされ続けるにはどのような企業であるべきか」を中長期的な視点で描いた「南海が描く“2050年の企業像”」を2022(令和4)年に策定した。策定当時に入社した従業員が当社グループの経営を担っているであろう30年後を見据えたものとするため、策定の過程で若手従業員の座談会を実施するなど幅広い層の従業員から意見を収集した結果、「沿線への誇りを礎に、関西にダイバーシティを築く事業家集団」を当社グループの未来の姿として掲げることとした。この企業像には、新たな事業に挑戦し続け、やりきる企業でありたいという想いを込めており、そのために「地域共生・共創、多様な暮らし方」「モビリティ」「多様性・グローバル」「南海らしさ」という4つのポリシーを提示した。ダイバーシティは、「多様性」に代表される“Diversity” と「多様性あふれる街」を意味する“Diverse City” = “DiverCity”(造語)の2つの想いを表現したものである。

中期経営計画「共創140 計画」を発表

「南海が描く“2050年の企業像”」の実現と「南海グループ経営ビジョン2027」の達成に向けて、2022(令和4)年度からの3年間を、コロナ禍を経て「再構築」と「成長への基礎構築」を行う期間として位置付け、中期経営計画「共創140計画」を策定した。サステナブルな経営を進めるべく、戦略投資を確実に実行するとともに、2050年へのさらなる成長に向けて、新たな事業の芽の育成にも投資を振り向けていくこととした。また、「ステークホルダーと共に新たな価値を創っていく」という「共創」の精神は前回の中期経営計画から不変であるとして、同じく「共創」と命名した。

事業戦略は、下記の3つである。

  1. 公共交通事業のサステナブルな経営
    • 安全対策・災害対策の計画的な推進
    • デジタルテクノロジー活用:新しい技術・枠組みの構築と予防保全の充実
    • 収益力の強化、ブランド・サービスの向上
    • 新たなサービス ― 総合モビリティ事業への進化
  2. 選ばれる沿線づくりと不動産事業深化・拡大
    • 地域共創型まちづくり
    • “ グレーターなんば” 構想の加速 ― “ アジアのなんば” へ
    • 泉北ニュータウンのサステナブルなまちづくり
    • 物流施設の高度化
    • 私募リート設立
  3. 未来探索
    • DX 戦略 ― デジタル顧客接点の構築と新価値創造
    • 新規事業への取り組み加速
    • 外国人との共生
    • ツーリズム関連事業の強化
    • ニューノーマルでの新たなサービス提供

「共創140 計画」では、事業戦略を確実に実行するためには、人事戦略と財務戦略と事業戦略の連動が必要不可欠であることを明確化し、その強化に努めることとした。人事戦略においては、生産性向上と人財の確保・育成を図り、多様な活躍の場の提供を通じて新たな“ 人財ポートフォリオ” の構築を目指していくこととし、財務戦略においては、財務健全性の維持を大前提に、必要な投資をタイムリーに実行していくため、私募リートの設立をはじめ多様な資金調達を実施することとした。

計画の最終年度にあたる2024 年度の数値目標(連結ベース)は以下の通りとした。

営業利益※1
280億円
有利子負債残高/EBITDA※2倍率
7.5倍以下

※1営業利益+受取配当金
※2営業利益+受取配当⾦+減価償却費

「共創140計画」を発表
「共創140計画」を発表

遠北会長と岡嶋社長の就任

2023(令和5)年4月1日付で、遠北光彦社長が代表取締役会長兼CEO に、岡嶋信行上席執行役員が社長兼COO(同年6月20日に代表取締役)にそれぞれ就任した。

岡嶋上席執行役員は、鉄道事業に関する豊富な知見とともに、熊野交通株式会社の社長などの経験を通じて培った経営者としての実績とリーダーとしての求心力を有していることから社長に選任された。就任の記者会見で、今後の成長の鍵となるキーワードは「人」であるとして、交通業と不動産業の2本柱を深化・拡大させていくには、デジタルトランスフォーメーション(DX)をグループ全体で推し進めていく必要があると強調。また、特にグループの根幹である鉄道・バスといった運輸セグメントにおいては、安全確保を前提として、既存のオペレーションの仕方を大胆に変えていくなどの必要に迫られている、と述べている。さらに交通と不動産に続く「第3の事業」として、e スポーツなどの新たな事業に続き、事業エリアの特色を生かした新しい分野の取り組みを模索していきたいと抱負を述べた。

岡嶋信行上席執行役員が社長兼COOに就任
岡嶋信行上席執行役員が社長兼COOに就任

戦略的子会社化と経営統合による沿線価値の向上

通天閣観光の子会社化

「南海グループ経営ビジョン2027」の策定以後、当社は沿線価値向上に総力を挙げて取り組んできた。特にエリアマネジメントの分野では「グレーターなんば」の創造を掲げて様々な施策を進める中で、国籍や世代を超えた様々な要素が交ざり合う新世界エリアは、ダイバーシティの構築を志向する当社グループにとって、なんばに続く第2の玄関口にふさわしいエリアとして注目していた。

こうした背景のもと、大阪のシンボルである「通天閣」を運営する通天閣観光株式会社とともに、なんば・新世界・新今宮といった共通の事業エリアを成長させるべく、より強固な関係性を築いていくため、2024(令和6)年12月27日、同社を子会社化した。それに先立つ12月4日には、通天閣正面玄関前で「通天閣 南海グループ加入記念セレモニー ~なんかいい通天閣~」を実施。両者の社長が将来に向けた抱負を語るなどして、大きな社会的注目を集めた。

通天閣グループ化
通天閣グループ化

明光バスの子会社化

「共創140計画」では「ツーリズム関連事業の強化」を掲げ、観光関連の経営資源を有する和歌山エリアにおいて滞在・周遊型ツーリズムの促進を目指す「和歌山エリア戦略」を策定していた。

明光バス株式会社が事業を営む和歌山県田辺市・白浜町および上富田町は、熊野古道や南紀白浜温泉など豊富な資源を有する県内最大の観光地である。同戦略に掲げる、公共交通による県内の移動環境や観光・滞在拠点の再整備を通じた地域振興、インバウンドビジネスの取り込みに欠かせないと考え、2024年10月1日、明光バスを子会社化した。当社はかつて田辺・白浜エリアでホテル・旅館業やバス事業を展開していたが、2000年代初頭の不況期に撤退した経緯があり、今回の取り組みは同地域への再進出の契機となった。

明光バス
明光バス

泉北高速鉄道との経営統合

2022年4月1日、泉北高速鉄道とのさらなるシナジーの発揮を目的に、同社を完全子会社化した。さらに、両社が鉄道・不動産賃貸という同種の事業を展開していることから、経営資源を最大限に活用し、持続可能な鉄道運営体制と物流施設の高度化を図ることを目的として、2023年12月の取締役会において、泉北高速鉄道との経営統合に基本合意することを決議。当社を吸収合併存続会社、泉北高速鉄道を吸収合併消滅会社とする吸収合併方式を前提に検討することで合意した。その後、約1年3か月をかけて両者間で各種課題について協議を行い、2025年4月1日に経営統合を実現した。

これにより「泉北高速鉄道線」は「泉北線」となり、また同日に、南海・泉北相互間の運賃について、南海電鉄の運賃表を適用することで初乗り運賃の二度払いを解消。普通運賃(大人)で最大150円、通勤定期運賃(大人1か月)で最大12,470円、通学定期運賃(大人1か月)で最大5,640円の値下げを行った。

泉北高速鉄道との経営統合を伝えるポスター
泉北高速鉄道との経営統合を伝えるポスター

140年の伝統を受け継ぎ、新たな出発へ向けて新制服を発表

2025(令和7)年12月27日に創業140周年を迎えるにあたり、当社グループは、地域の皆さまやお客さま、関係先の皆さまへの感謝と、140年の伝統を継承しながら未来に向けて新たな挑戦を続けるという宣言を込め、140周年記念ロゴとコンセプト「Legacy into the Future」を制定。ロゴデザインは、沿線出身で当社に深い愛着を持ち、世界的デザイナーで大阪・関西万博のシニアアドバイザーも務めるコシノジュンコ氏に依頼した。

南海140周年記念ロゴ
南海140周年記念ロゴ

創業140周年を迎える2025年は、泉北高速鉄道の統合や大阪・関西万博の開催など、当社にとっても関西にとっても節目となる年である。改めて従業員の団結を強め、万博を契機に関西を訪れるお客さまへ最高のホスピタリティを提供するため、制服のリニューアルを決定した。

制服デザインもロゴと同じくコシノ氏に依頼し、そのコンセプトは「“UNITY”(結ぶ力・団結)」。ジェンダーレスで男女の区別のないデザインを採用し、従業員の意見も取り入れながら、快適で動きやすく、手入れしやすい仕様や素材で製作された。2025年4月1日に、運輸部門において32年ぶりとなるリニューアルとなった。技術部門の制服は、同年9月にリニューアルした。

制服デザインをリニューアル
制服デザインをリニューアル

鉄道事業の分社化とまちづくり会社への変革

2023(令和5)年2月28日、「セグメント経営への移行」と「権限の委譲」を図るため、既存のコーポレート部門の再編に加えて、公共交通グループとまちづくりグループを新設し、業務組織を改正した。また、時代の変化に即応できるスピード感のある意思決定と、次世代の経営を担う人財育成につなげるため、各グループ長に業務執行に関する意思決定権限の委譲を進めた。

こうして各グループのもとに、グループ会社を含めた事業運営を集約し、セグメント経営に向けた体制を整備するとともに、不動産事業における私募リートの設立といった不動産回転型ビジネスへの進出など、それぞれの特性に応じた戦略を本格化させた。このような状況下で、当社が描く未来像に向かうには、事業戦略をよりスピード感を持って推進していくことが不可欠であり、鉄道事業と不動産・まちづくり事業それぞれの事業特性に応じた実行体制を持つ強靭な組織に改革していくことが必要と判断し、2024年10月30日に鉄道事業の分社化を発表した。

2025年3月3日付で南海電気鉄道分割準備株式会社(以下、準備会社)を設立し、2025年3月31日開催の取締役会において、2026年4月1日を効力発生日として、会社分割により鉄道事業を準備会社へ承継させることを決議し、準備会社との間で吸収分割契約を締結、2025年6月開催の定時株主総会で同契約は承認された。

この分社化によって、準備会社が当社から鉄道事業を引き継ぎ、当社は不動産事業と未来探索を通じてグループ全体の事業成長を牽引するとともに「まちづくり司令塔機能」「グループコーポレート機能」を担う事業持株会社となる。

新商号発表

2025年3月31日開催の取締役会においては、会社分割に伴い、2026年4月1日付で当社は「株式会社NANKAI」に商号を変更することをあわせて決議し、2025年6月の定時株主総会で承認された。

当社グループの使命は、沿線地域の価値を高め、その暮らしに継続的に貢献していくことである。これまで地域とともに築いてきた「南海」という名は、沿線地域に根差した誇りそのものである。インバウンド需要や、ダイバーシティといった沿線の個性をさらに磨き上げ、地域と当社グループの存在感を一層高めていくという強い思いを込めて、新商号にはアルファベット表記「NANKAI」を採用した。

また、準備会社の商号には、「現存する最古の私鉄」として当社が積み重ねてきた歴史と誇りを鉄道事業とともに引き継ぐという思いを込めて、「南海電気鉄道株式会社」の商号を承継することとした。

「株式会社NANKAI」の新商号を発表
「株式会社NANKAI」の新商号を発表

「共創140 計画」の成果

「共創140計画」の3年間では、セグメント経営への移行、泉北高速鉄道との経営統合の推進、鉄道事業分社化の決定など、将来に向けたガバナンス改革を積極的に実行した。公共交通・まちづくりの分野では、戦略打ち手を概ね計画通りに遂行し、需要回復を着実に捉え、収益基盤をコロナ禍前の水準まで再構築した。これらにより、数値目標を1年前倒しで超過達成した。

事業戦略の3項目における具体的な取り組み実績は以下の通り。

  1. 公共交通事業のサステナブルな経営
    • 運賃改定による投資原資確保、連続立体交差事業の推進
    • 泉北高速鉄道との経営統合・鉄道事業分社化の決定、ワンマン運転拡充
    • 自動運転実証試験
    • タッチ決済導入、空港線ダイヤ改正、オンデマンドバス実証実験
  2. 選ばれる沿線づくりと不動産事業深化・拡大
    • なんば広場整備、なんばパークス サウス開業、通天閣観光連結子会社化
    • 回転型ビジネス本格展開(私募リート設立)、物流施設の高度化
    • 泉北ニュータウンスマートシティ戦略推進
  3. 未来探索

    スポーツ事業本格参入、海外人財紹介事業推進、ツーリズム戦略策定

一方、収益不動産の取得が想定通り進捗しなかったことや、建築資材価格の高騰による工事計画の見直しなどが影響し、成長投資は計画未達に終わったことなどの課題を残した。

こうした取り組みの結果、2024(令和6)年度の営業収益は2,607億円、営業利益は346億円(受取配当金を含まない)、純有利子負債残高/EBITDA倍率(営業利益+受取配当金+減価償却費)は5.8倍となった。

特急ラピート利用状況の推移
特急ラピート利用状況の推移 ※料金収入は税別