経営の最近10年

2018~2020

南海グループ10年の成長戦略とブランド力向上に向けて

「南海グループ経営ビジョン2027」の策定

2015(平成27)年度から2017年度にかけて取り組んだ「深展133計画」では、各年度において数値目標を達成することができた。一方で、人口減少やITの進化など、今後の当社グループは一層激しい環境変化に直面することが予想された。そのため、持続的な成長に向けて長い時間軸で「ありたき姿」を定め、その達成に向けて各種の施策にぶれることなく取り組むことが必要であると考え、2018年2月に「南海グループ経営ビジョン2027」を策定した。

そこで定めた当社グループの「10年後のありたき姿」は、“ 満足と感動の提供を通じて、選ばれる沿線、選ばれる企業グループとなる” であり、10年間の方向性を“ なにわ筋線開業に向け、沿線を磨く10年間”とした。また、事業戦略には“10年後の人口動態を転出超過から転入超過に逆転させる” ことを目標とする「選ばれる沿線づくり」と、“ 鉄道と並ぶ柱として営業利益の過半を生み出す事業に育成する” ことを目標とする「不動産事業の深化・拡大」を掲げた。

グループ経営基盤の整備(事業選別の徹底、ITを積極的に活用する企業グループ、人材戦略、財務戦略)が下支えをすることで、2つの事業戦略が相乗効果を発揮することを前提に、ビジョンの最終年度にあたる2027(令和9)年度の数値目標(連結ベース)を以下の通りとした。

営業利益※1
450億円
有利子負債残高/EBITDA※2倍率
6倍程度

※1営業利益+受取配当金
※2営業利益+受取配当⾦+減価償却費

「共創136 計画」を発表

2018(平成30)年度から2020(令和2)年度にかけて取り組む中期経営計画は、「南海グループ経営ビジョン2027」の達成に向けた3年間の「基盤整備期」と捉え、「将来の成長のための布石を打つ」計画であった。すべての関係先・ステークホルダーとともに、将来における成長を実現し、新たな価値を創造することが必要であると考え、当該3年間を「共に創っていく3年間」と位置付けて「共創136計画」と命名した。

同計画の基本方針は下記の5項目であった。

  1. 安全・安心で良質な交通サービスの提供
  2. なんばのまちづくり
  3. インバウンド旅客をはじめとする交流人口の拡大
  4. 駅を拠点としたまちづくり
  5. 不動産事業の拡充

計画の最終年度にあたる2020 年度の数値目標(連結ベース)を以下のように掲げた。

営業利益※1
370億円
有利子負債残高/EBITDA※2倍率
7.5倍以下

※1営業利益+受取配当金
※2営業利益+受取配当⾦+減価償却費

「共創136計画」を発表
「共創136計画」を発表

みさき公園の閉園

みさき公園は1957(昭和32)年に開園し、動物園やイルカショーを中心とした自然豊かな総合遊園地として約63年間、主に沿線のファミリー層に親しまれてきた。開園30周年を迎えた1987年には大型プール「ぷ~るらんどRiO」を開設し、1989(平成元)年度には年間来場者数約72万人を記録したが、その後はレジャーの多様化により来場者が減少し、2017年度には約36万人に落ち込んでいた。

新イルカ館「シャイニースタジアム」などの施設拡充による需要喚起策を講じていたが、長年赤字が続き抜本的な改善には至らず、2017年度には約33億円の減損損失を計上。さらに2018年の台風被害による「ぷ~るらんどRiO」の営業中止なども追い打ちとなり、2020(令和2)年3月31日での事業撤退を決定。動物たちはアドベンチャーワールドをはじめとした他の施設へ引き取られることとなった。

コロナ禍のため、閉園日に先立って企画していた感謝イベントの一部は中止となり、営業最終月となった3月は臨時休園と営業再開を繰り返した。休園のまま閉園することも心配されたが、最後の2日間は屋外施設のみでの営業を再開。シャイニースタジアムでは、事前抽選で入場者を200人に限定してイルカショーを開催したところ、スタジアムの外にまで別れを惜しむ人たちが多く押し寄せた。営業終了日には、職員が入場口の前で最後のあいさつを予定していたが、最後を見届けようとした来園者の密集を避けるべく、園長から簡単なあいさつをするにとどめることとなり、みさき公園はその歴史に幕を閉じた。

みさき公園閉園の瞬間 感謝の言葉を述べる園長
みさき公園閉園の瞬間 感謝の言葉を述べる園長

ブランド力の向上への取り組み

ブランドスローガン制定‘なんかいいね’があふれてる

「南海グループ経営ビジョン2027」で掲げる「満足と感動の提供を通じて、選ばれる沿線、選ばれる企業グループとなる」ためには「ブランド力」の向上が求められた。そこで重要な役割を果たすのがブランドスローガンである。

新たなブランドスローガンを決めるため、ブランドコンセプトの「なごむ、ときめく喜びを結び、広げる」をもとに4つのブランドスローガン候補を考案。2019(平成31)年3月に南海グループの全従業員を対象に「ブランドスローガン総選挙」を行い、3,264人から回答を得た結果、「‘なんかいいね’ があふれてる」が選ばれた。

スローガン制定後は、南海人一人ひとりがブランド力の向上に取り組む意義や必要性を理解し、「自分事」として捉えるため、「南海ブランドブック」を研修や職場で活用。また、社員ブランド意識定点調査(アンケート)の実施や、従業員のモチベーション向上と従業員同士のコミュニケーション促進を目的とする「ʻなんかいいねʼカード」に代表される、ブランド向上社内活動「なごみときめき活動」などに取り組んでいる。

「‘なんかいいね’があふれてる」プロモーションポスター
「‘なんかいいね’があふれてる」プロモーションポスター
「ʻなんかいいねʼカード」
「ʻなんかいいねʼカード」
「ʻなんかいいねʼカード」
「ʻなんかいいねʼカード」

公式ウェブサイトの全面リニューアル

公式ウェブサイトはステークホルダーの方々とのより良いコミュニケーションの実現に必要不可欠なメディアである。

2022(令和4)年8月に公式ウェブサイトを約10年ぶりに全面リニューアルした。AI を用いたFAQ サイトとチャットボットを導入し、鉄道利用のお客さまがウェブ上でいつでも、すぐに疑問を解決できる環境を整えた。また、2023年9月1日にはブランドメッセージムービーを同サイトで公開した。

リニューアルにおいて「IR・サステナビリティ情報の拡充」をポイントの1つとしたことが評価につながり、日興アイ・アール株式会社「全上場企業ホームページ充実度ランキング」の総合部門において、2022年度から2年連続で「優秀サイト」に、2024年度には「最優秀サイト」に選ばれた。また、大和インベスター・リレーションズ株式会社「大和インターネットIR 表彰2024」においても「優良賞」を受賞した。

公式ウェブサイトリニューアル
公式ウェブサイトリニューアル

「共創136計画」の成果

「共創136計画」は、将来の成長の鍵となる先行投資を重点的に行う「成長の布石を打つための3年間」であった。なんばスカイオ開業、不動産賃貸物件の拡充、物流施設の高度化に加え、輸送力の増強を図りつつ、ストレスフリーな移動環境を整備。他者とのアライアンス強化や新規事業の拡充にも積極的に取り組んだ。

基本方針の5 項目における具体的な取り組み実績は以下の通り。

  1. 安全・安心で良質な交通サービスの提供
    • 車両更新(南海線24両、高野線30両、鋼索線ケーブルカー2両2編成)
    • 駅トイレの美装化(36駅)、ホームドアの整備(難波駅)
    • 自然災害に対する施設の安全性と運転保安度の着実な向上(橋梁異状検知装置の設置、高架柱・駅の耐震補強など)
  2. なんばのまちづくり
    • 南海ターミナルビル近接ゾーンの充実(なんばスカイオの開業、収益物件の取得など)
    • 「 なんば~新今宮・新世界」南北軸の形成(難波中二丁目開発計画の推進、新今宮駅リニューアル計画の推進、「星野リゾートOMO7大阪新今宮」開発計画への参画・出資など)
  3. インバウンド旅客をはじめとする交流人口の拡大
    • 訪日外国人受入環境の整備(海外旅行代理店向け企画乗車券のe チケット化の実施、電子決済サービスの導入など)
    • 沿線各所の特長を生かした観光振興(高野山観光魅力向上プロジェクト、加太さかな線プロジェクトの推進)
    • 雇用と産業の創出による沿線地域の魅力向上(加太リノベーションまちづくりプロジェクトの推進、沿線企業イノベーション支援策「アトツギソン」の開催)
  4. 駅を拠点としたまちづくり
    • 駅の再整備による沿線の魅力向上(キーノ和歌山の開業)
    • 泉北ニュータウンの再生・活性化(泉ケ丘駅のリニューアル、泉ケ丘駅前活性化計画の推進)
  5. 不動産事業の拡充
    • 物流施設(北大阪流通センター)高度化の推進(1号棟開業、新A棟・E棟の建設)
    • 不動産賃貸物件の拡充(難波御堂筋センタービル、難波フロントビルなど)

その結果、2019(令和元)年度には連結営業利益が過去最高益を更新するなど、「共創136計画」の数値目標(営業利益370億円、有利子負債残高/EBITDA 倍率7.5倍以下)に対して、1年前倒しでの達成も視野に入る状況となったが、2020年初頭以降のコロナ禍の影響を大きく受け、2020年度は目標未達となった。

感染症や自然災害といった社会の不確実性が高まる中、「不動産回転型ビジネスへの進出やフィービジネスの推進」「インバウンドに過度に依存しない収益基盤の強化」「コロナ禍の影響により損なわれた財務基盤の立て直し」「アフターコロナ及び中長期的な人口動態を見据えた事業構造の構築」などが経営上の課題となった。

コロナ禍で閑散としている関西空港駅
コロナ禍で閑散としている関西空港駅(左)と難波駅(右)
コロナ禍で閑散としている関西空港駅(上)と難波駅(下)
難波駅