電車をはじめとする公共交通機関は、誰もが利用できる交通手段です。南海電鉄でも、すべてのお客さまに鉄道を安全・安心・快適にご利用いただけることをめざして、点字ブロックの設置や社員教育など、ハード面・ソフト面ともにバリアフリー化を進めています。
その取り組みのひとつとして、今回、大阪北視覚支援学校の先生方とともに理解を深めようと、鉄道利用での「もしもの時に備えるための鉄道体験」を開催しました。
ホームから線路への転落事故は、年々人数は減少していますが、ゼロではありません。実際に、大阪北視覚支援学校の全盲の先生も、過去に転落した経験があると話します。
視覚に障がいのある方が鉄道を利用する時には、ホームから線路に転落してしまわないか、誤って行き先の異なる電車に乗ってしまわないかなど、常に不安と隣りあわせだといいます。
そうした不安を少しでも解消できるよう、今回開催した鉄道体験では、羽衣駅のホームや鉄道研修センターの教材や設備を使い、線路に落ちてしまった時の対処法と踏切横断時のトラブルへの対応、切符の買い方などを体験いただきました。
まずは羽衣駅のホームでの体験です。南海電鉄の担当者がホーム下の構造の説明や、転落時の退避スペース、ホームの壁にあおむけになって避難し、救助がくるまで待機する安全な姿勢などを紹介し、その後、参加者が退避スペースの広さや高さの確認と、安全姿勢を身をもって知るために、ホーム下の壁とレールのすき間に寝転び、命を守る方法を実践。先生方からは「退避スペースは意外と広く感じた」「安全姿勢じゃなければ命は守れても大怪我をしてしまうかも」など、実践したからこその気づきや声が上がりました。
次に鉄道研修センターへ移動。鉄道研修センターとは、運転士、車掌、駅員などを養成するための施設であり、実際の踏切や券売機、自動改札機などが置かれています。
同センターでは、切符の買い方、自動改札機の利用体験だけでなく、遮断桿(しゃだんかん)が降りて踏切の外に逃げられないときの対処法や非常停止ボタンの押し方など、踏切横断時のトラブルへの対応を学ぶ体験が行われました。
降りた遮断桿と走る電車との幅は約1メートル。遮断桿が降りてしまった際には、遮断桿を探し、見つけたら体全体で抱えるようにしてつかまります。たとえ背中にリュックを背負っていてもしっかりと遮断桿につかまっていれば、万が一の事態は避けられることを知り、先生方は安心した表情を浮かべていました。
最近はPiTaPaなどの交通系I Cカードを利用することが増えましたが、切符の買い方体験では、券売機のタッチパネル下のテンキー操作で切符の購入やICカードへのチャージができることを確認するなど、券売機での切符の買い方をおさらいし、買った切符で自動改札機を通る体験をしました。
晴眼者の先生はアイマスクをつけて行い、見えない世界を体験。券売機から自動改札機までの距離は約2メートルでしたが、自分の歩いている方向や向きがわからなかったり、自動改札機にうまく切符が入れられなかったりと、多くの先生が手こずっていた様子で「とても不安だった」といった声も上がっていました。
INTERVIEW
「今回の体験が、私の心に安心をくれた」
大阪北視覚支援学校 尾方 剛先生、中垣 幸一先生
今回の体験で、初めて知ったことが多く、本当に体験させていただいてよかったです。万が一ホームから線路に転落してしまっても安心して行動できる気がしますし、落ち着いて行動すればかなり高い確率で命を守ることができると思えるようになりました。
また、視覚に障がいがある方だけでなく、お客さまの安全な利用について親切・丁寧に対応する姿勢に感謝しています。
安全への取り組みを聞いた上でホーム柵の設置など、今後検討いただきたいこともありますが、まずは、今回私たちが体験で教えてもらった安心・安全への取り組みを伝え、社会全体の安全意識がもっと高まるように発信してもらえるとありがたいです。
最近では鉄道利用の際に、一般のお客さま方からも「何かお手伝いしましょうか?」との声かけが増えてきてうれしく思っています。こうした光景が定着してくれることを願っています。
INTERVIEW
「気づきを活かして、心のバリアフリーをもっと広げたい」
安全推進部 鉄道研修センター 根来 祥伸
鉄道研修センターでは、すべてのお客さまが安全・安心・快適にご利用いただけることをめざし、お手伝いを必要とするお客さまには、普段からお客さまの気持ちを尊重して相手の立場に立ったお手伝いをするよう指導しています。しかし、今回の鉄道体験を通じて、遮断桿が降りる時の警報音が聞こえても自分が踏切のどちらにいるかがわからないなど、視覚に障がいがある方が不安と感じることはまだまだあると気づきました。
ハード面ももちろんですが、まずはこうした気づきを活かしてお手伝いのお声がけをし、私たちから心のバリアフリーを社会全体へ広げていければと思います。
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