通勤電車をもっと身近に、もっと快適に。
毎日利用するお客さまに、車両づくりを一緒に考えていただくプロジェクトを始めました。
今回は、南海電鉄社内でプロジェクトチームを結成し、実際にコンセプトメイキングから
デザインメイキングまでを手がけた社員4名に集まってもらい、座談会を実施しました。
9000系リニューアル車両に込めた熱い想いをご覧ください。
-
鉄道営業本部統括部 辻本 教秋さん
鉄道事業の収支に関する計画の策定や分析のほか、鉄道全体にまたがる施策・案件の調整も手がける。
-
営業部 有村 早苗さん
沿線情報誌「NATTS」の制作を担当。誌面の構成やデザインのチェック、取材の同行など、日々記事づくりに奔走する。
-
なんば・まち創造部 渕田 秀之さん
イルミネーションをはじめとするイベントの情報発信や、時にはまちづくり団体の事務局員として、なんばおよび沿線の地域活性化のための新たなまちづくりに奮闘中。
-
難波開発部 福井 良佑さん
なんばスカイオの建設の設計や工事に関する業務に従事。設計事務所や施工会社等とともに、ビルづくりを行っている。
NANKAIマイトレインプロジェクトに
参加した理由は?

- 辻本:
- 日頃から感じていた車両の課題を解決したくて応募しました。鉄道以外のみなさんと一緒に仕事することは少ないため、この機会に部署の垣根を越えて新たなチャレンジをしたい気持ちもありました。
- 有村:
- みんなでつくる車両には、女性や小さな子どものいる世代の意見も必要だと考えて参加しました。私自身が母親でもあるため、その視点はもちろん、情報誌づくりの経験も生かしたいと思いました。
- 渕田:
- 今回の公募は、いの一番に手を挙げました!車両は鉄道会社にとって目玉となる大切な商品。そのデザインを変えるプロジェクトに社内メンバーを募っているのであれば、それに応えたいと思いました!手を挙げた第一号です。
- 辻本:
- 電車が好きだからじゃないの?(笑)
- 渕田:
- もちろん、大好きですよ(笑)
- 福井:
- 私は建築学科を卒業していて、それが今回応募した理由にもつながります。電車の空間は部屋みたいなものだとずっと考えていて、車両のデザインに興味がありました。機会があれば関わりたいと思っていた矢先、プロジェクトのお話をいただいたので、即、応募しましたね。素直にやりたかったです!
- 辻本:
- デザインの部分では福井さんが音頭を取ってくれましたね。本当に最後の最後まで、こだわっていました。
- 福井:
- デザインは自分の意見を言い過ぎたかもしれません(笑)でも、辻本さんがイメージ通りの画に表現してくれました。
デザインコンセプト「わが家のリビングにいる
ような」が生まれたきっかけ

- 福井:
- 私自身、毎日南海電車に乗っています。日常的に車内にいる時間が多いのですが、古い車両についてはお世辞にも居心地が良いとは思えません。その経験から、居心地の良い電車をつくりたいと考えました。居心地といえば、家のリビングが思い浮かび、メンバーの賛同を得てそれがコンセプトになりました。
- 有村:
- コンセプトが決まってからは、リビングのイメージをみんなで話し合いましたよね。できるだけ多くの人が持っているリビングのイメージを模索し、居心地の良さをデザインで伝えたいと思いました。
- 福井:
- 色はできるだけ居心地の良いイメージを持つ色を考えました。床は和やかなイメージを持つ木目調に。空間に締まりがでるようにシートはブラックとグレーに。ナチュラルモダンなリビングをイメージしてデザインしました。

- 有村:
- 他の鉄道会社さんの車両に乗ったときに、これは良いなと感じたことも参考にしましたよね。
- 福井:
- 木目調を仕上げに使っている同業他社さんの車両もありますが、違う使い方を意識しました。また、吊り革の色をネイビーにしているのは、アクセントカラーを入れたかったからです。例えば、部屋に置き時計のような小物のインテリアを置くように空間にメリハリをつけられると思いました。他社さんの車両の吊り革がカッコ良かったので、参考にした部分はありましたね(笑)。
- 辻本:
- アンケート結果を見ても、ネイビーがお客さまの支持を集めていましたね。
居心地を追求した車内空間のこだわり

- 福井:
- シートの色を一人分のスペースごとに交互に変えているのは、辻本さんのアイデアですよね。
- 辻本:
- この色を考えたのは、7人掛のシートに6人で座っている状況が多いことを解決したかったからです。一人分のスペースをわかりやすくすることで、お客さまが自然に7人で座っていただければと思っています。
- 渕田:
- 私も同じ思いがありました。一人ひとりが配慮することで、座れる人が増えれば車内はより快適になるはずです。だからこそ、辻本さんのアイデアには強く賛同しましたね。
- 辻本:
- 「譲り合ってお座りください」などと促さなくても、お客さまが自然に座るだけで、7人座れる環境が理想ですよね。

- 有村:
- デザインのコンセプトが決まる前、南海電車のイメージを言い合うときに、残念ながら「汚い」とか「古い」という声がありました。誰しも乗るなら、綺麗な電車の方がいいですよね。長時間乗るならなおさらです。ですから、イメージを払拭したいという思いもありました。
- 渕田:
- そうですよね。シートが汚れていたり、剥げていると、古く感じてしまいます。どれだけ良質な設えにしても、色が褪せたり、剥げたりしないようにしたかったですね。
- 福井:
- 建物でも、長く使っていると白は素材によりますが汚れが目立ってきやすいですよね。だから今回はあまり使わないように心掛けました。
- 有村:
- シートの色を濃くしたのは、汚れを目立ちにくくして、清潔感を保つためでもあります。
- 辻本:
- 色褪せず新しさも維持したいから、できるだけ濃い色を選びました。お客さまには気持ちよく電車に乗ってもらいたいですからね。
- 有村:
- 小さな子どもがいる家庭は車を使うことが多いですが、ぜひ電車にも乗って、楽しさを感じてもらいたいです。その思いがあり、子どもと一緒に居心地良く過ごせる空間にしたかった。「電車乗って楽しいな」そう思ってもらえる雰囲気を醸し出したかったですね。
選ばれたからには、全力で実現へ

- 渕田:
- 私たちのデザインがお客さまに選ばれた時には、自分たちが思っていることが、独りよがりではなく、お客さまにも共感していただけるものだったと、わかって嬉しかったです。
- 有村:
- リビングという具体的なコンセプトイメージが、お客さまに伝わりやすかったのかもしれませんね。
- 渕田:
- 実をいうと、デザインができあがった時には、手応えがありました(笑)
- 福井:
- やりきった感はありましたね。
- 辻本:
- 私はできたデザインを写真に撮って、すぐに上司に見せましたよ。部署のメンバーも良いですねと言ってくれました。会社の人にも、お客さまにも共感を得られたことはすごく嬉しいです。
- 福井:
- 先日のアンケートイベントでは、予想以上に多くお客さまが来られて、こちらの手が足りないような状況でしたよね。
- 渕田:
- アンケートイベントでの反響の大きさからも、お客さまは車両のデザインに興味があると思います。お客さまと一緒につくるというプロジェクトが受け入れられたのではないでしょうか。
- 辻本:
- 本当にお客さまと一緒にみんなにとって居心地のいい車両をつくり上げていきたいと思い、デザインが決定してから、車両部にお願いして、イメージパースだけでは伝わらない部分や実際に使用する素材の確認もさせてもらいました。出来上がってから、「ちょっとイメージと違うな」と思いたくなかったので。
- 渕田:
- だいぶ確認しましたよね。サンプルを見て、これならOKかなと思いました。ただ、シートの素材は布地の状態で見たので、実際に座席の形状に加工されたものも確認しないといけないですが(笑)
- 有村:
- 吊り革のネイビーとか、実際の色味を見て、またみんなで悩みました(笑)
- 渕田:
- こだわりが強過ぎて、車両部を困らせてしまったかもしれません(笑)。ですが、良い感じで製造が進んでいると思います。このプロジェクトによって、南海電車の車両はお客さまのご希望に一歩近づいたのではないでしょうか。
- 辻本:
- 乗車いただいたお客さまに、感想を聞きたいですよね。
- 渕田:
- 例えば、なんば駅のホームにマイトレインを停めて、みんなに乗ってもらいたいです。ここは、統括部の辻本さんに頑張ってもらって。
- 辻本:
- それは無理かも(笑)。できることなら、乗車いただいているお客さまに直接聞きたいですね(笑)
- 渕田:
- 今後もNANKAIマイトレインを続けて、より良い車両をつくっていきたいですね。次は観光列車がいいです(笑)。少なくとも、アンケートをご記入いただいたお客さまには、ぜひ実際にご乗車いただきたいです。