”なんかいいね”があふれているNANKAI

ひと まち 未来 なんかいい ACTION

豊かな暮らしの実現

人生の最期まで、自分らしく。
一人ひとりに寄り添うお葬式

人生の最期まで、自分らしく。一人ひとりに寄り添うお葬式

南海沿線を中心に「葬儀会館ティア」を運営する、南海グリーフサポート。その受付には、手のひらほどの小さなレインボーフラッグが置かれています。気に留める人は、多くないかもしれません。けれどこの小さな旗には「誰もが安心して、大切な人とお別れできるように」 という想いが込められています。

大切な人との最期のお別れに、関われない人がいる

家族葬、一日葬、無宗教葬など、近年、お別れのかたちは多様になっています。一方で、「大切な人との最期のお別れに立ち会えないかもしれない」「本当の自分として送り出してもらえないかもしれない」、そうした不安を抱えながら暮らしている人たちがいます。

性的マイノリティ(LGBTQ+)の人たちにとって、葬儀は課題の多い場です。長く寄り添ったパートナーでも、家族として扱われず、葬儀の打ち合わせや最期のお別れに十分関われないことがあります。また、自身の葬儀では、本人の性自認や、生前大切にしていた名前・服装などが尊重されず、その人らしい姿で見送られないケースも少なくありません。LGBTQ+当事者層は、全国20〜59歳の10.6%※にのぼるという調査結果もあり、決して遠い誰かの話ではありません。

こうした背景から、南海グリーフサポートは「あらゆる人と共感し感動葬儀をクリエイトする」というビジョンのもと、この課題に業界を先駆けて取り組んでいます。

※出典:電通グループ『LGBTQ+調査2026』より

LGBTQ+フレンドリーな葬儀を、静かに、着実に

レインボーフラッグがおかれた葬会館ティアの受付の写真
「PRIDE指標2025」の表彰状の画像

取り組みが始まったのは、2023年6月。「恥ずかしながら、当初はまったく知識がありませんでした」と語るのは、総務部長の中山。そこでまずは、自分たちが理解ある組織になることからスタートしました。
外部から講師や当事者を招いて交流会や社内研修を行い、慶弔休暇や祝金の対象に同性パートナーを加えるなどの社内制度を、ひとつずつ整えていきました。こうした歩みを重ね、LGBTQ+に関する職場での取り組みを評価する『PRIDE指標』で、3年連続ゴールド認定を取得しています。

総務部長の写真

総務部長 中山 篤

また、サービス面での見直しも進めています。例えば、葬儀申込書の性別記入欄を男女選択式から自由記述に見直したり、新設した会館ではトイレ表示の男女の色分けをなくしたり。全会館の受付にはLGBTQ+の方も安心して相談できることを示す、手のひらほどの小さなレインボーフラッグを置きました。

「当初はレインボーフラッグを大々的に掲げようとしましたが、当事者との対話の中で、『大々的に掲げられることで、かえって入りづらいと感じる人もいる』というご意見をいただき、やめたんです」と中山。当事者の方々の声に学びながら、目立たず、少しずつ、改革は進んでいます。

葬儀の枠を超えて、“自分らしく生きたい”に寄り添う

レインボーフェスタにて人々が集まっている画像

活動は、会館の外にも広がっています。2023年から、大阪・扇町公園で開催される「レインボーフェスタ!」には毎年出展しています。宣伝・イベントを担当する家﨑は、初めて参加したときのことをこう振り返ります。

「イベント出展は慣れておらず、葬儀社として何を伝えるべきか手探りの中、祭壇や骨壺を展示しましたが、見事に空振りで、全然足を止めてもらえませんでした…。」

それでも、参加して初めて見えた景色もありました。ゲートをくぐり会場に入ると、同性同士で手をつなぎ、堂々と楽しそうに過ごす人たちがいる。それは、普段のまちでは、まだあまり見かけない光景でした。

「日常生活では、同性同士で手をつないだり、自分たちの関係性をオープンにしたりすることに、ためらいや不安を感じる人がたくさんいることに気づかされました。人生の最期まで自分らしくいられる場を、何が何でもつくらなければという気持ちが込み上げてきました」(家﨑)。

営業企画部 課長の写真

営業企画部 課長 家﨑 幸司

2024年には、泉ヶ丘ひろば専門店街となんばパークスで「私たちだって“いいふうふ”になりたい展」を、特定非営利活動法人カラフルブランケッツとともに開催。同性カップルの実情や願いを伝え、婚姻の平等について「知る・考える」きっかけづくりにも貢献しています。

「葬儀のことは、普段なかなか考えないもの。だからこそ、こちらからまちに出て、LGBTQ+フレンドリーな葬儀に取り組んでいることを知ってもらい、『ここなら安心して相談できる』と思ってもらえる存在になることが大切です」と家﨑は言います。

最初で最後の「ありがとう、姉ちゃん」

ティア泉大津支配人岩元がスーツを着用している写真

ティア泉大津の支配人を務める岩元には、忘れられないお葬式があります。それは、活動が始まる数年前のことでした。

喪主は、離れて暮らしていたお兄さまを亡くされた弟さま。葬儀の打ち合わせで祭壇、お礼品、お食事などが決まっていく中、喪主さまはどこか歯切れの悪い様子でした。何か言い出せずにいるのかもしれない――そう感じた岩元は、打ち合わせの最後に「他にこちらで聞いておくことはないですか」と尋ねました。すると「実は、兄はトランスジェンダーでした」と打ち明けてくださったのです。

岩元は、「それでしたら、ご本人が生前大切にされていたお名前や服装で、女性としてお見送りすることもできます」と提案しました。後日、喪主さまのお子さま二人も交えて、改めて打ち合わせを行い、女性として送ることが決まりました。
「お姉ちゃん、ピンク好きだったね」「この服お姉ちゃんに似合うね」お子さまたちが主体的に準備を進めて、祭壇はピンクの花に、遺影の額はパープルに決まりました。そうした中、喪主さまだけは終始「兄貴」と呼んでいました。

ティア泉大津支配人の写真

ティア泉大津 支配人 岩元 健治

そして当日、棺に好物を納め、最期のお別れをする出棺の場面で、喪主さまはお花を手向けながら、ぽつりと語りかけました。

「最初で最後だからな。ありがとう、姉ちゃん」

「その一言を聞いたとき、この仕事をしてきて良かったと心から思いました」と岩元は振り返ります。ただ、今はその考え方も変わりました。「もし打ち合わせの最後に私が『他に聞いておくことはないですか』と聞かなかったら、男性として送っていたわけです。年間2,000件以上の葬儀を受ける中で、これまでにもその人らしくお見送りできなかった式がきっとあったはず。そう考えると、美談で終わらせたらダメだと思っています」

※個人が特定されないよう、
事実関係の一部を変更・再構成しています

押し付けず、そっと本心に寄り添う。

ティア住之江の外観の写真

LGBTQ+フレンドリーな活動を通して見えてきたのは、性的マイノリティの方への対応に限らない、葬儀そのものへの向き合い方でした。

たとえば無宗教のお式をご希望の方にも、「ではセレモニーなしですね」と決めつけず、必ず「何か、やりたいことはありますか」と尋ねます。故人さまの好きだった演歌で出棺したり、六甲おろしで送り出したお式もありました。籍を入れていないパートナーが喪主を遠慮されていたら、「ご希望であれば、喪主をお務めいただけます」と選択肢をお伝えすることもあります。

「実は多くの方が葬儀はこういうものと思い込んでいて、『こんなことをしたらダメかな』と躊躇しがちです。だけど、心の底からこれで良かったと思える時間にしていただきたいから、『やりましょう』と選択肢を示すようにしています。ただし、提案はしてもお客さまに委ねることを心がけています」と岩元。「背中を押すぐらいが、ちょうどいい向き合い方だと思うんです」と中山も続きます。

押し付けず、そっと本心に寄り添う。それは、受付の小さなレインボーフラッグが教えてくれた姿勢です。誰もが安心して相談できることが当たり前になる日まで。南海グリーフサポートの静かな挑戦は続きます。

南海グリーフサポート(葬儀会館ティア)については、こちら

LGBTQ+監修:藤原 直(Life Journey)

関連するSDGs

ジェンダー平等を実現しよう
人や国の不平等をなくそう
住み続けられるまちづくりを
パートナーシップで目標を達成しよう

その他の記事を読む